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異世界転移?ふざけるな!  作者: 力なき脳筋
異世界転移?ふざけるな!
43/222

スカウトのための準備

スライムの巣窟にたどり着いたスバルは、何度か拳を握り直していた。

衝撃耐性を持つスライムたちは、彼の高火力に

一応は耐えてくれる相手だった。ほどよくHPを削れて、

ようやくスキル【テイム】の適用条件を満たしていく。


ポン、ポン、と順調にスカウト成功の光があがる。


スライム、跳ねスライム、毒スライム……


種類ごとに“スバルダンジョン”へ送り出されていく姿に、思わず呟いた。


「スライムに感謝する日が来るとはな……」


これでようやく第一階層のモンスターが揃った。

次はボス――スライムロード。その存在に挑むときが来た。


かつてブルーローズと共に踏み込んだあの扉の前。

今度は彼一人きりだった。


「邪魔するぜぇ~」


口調はなぜか居酒屋テンションだった。

扉が開いた瞬間、スライムロードが姿を現す。あの頃と何も変わっていない。


「久しぶりだな……元気だったか?」


問いかけても返事があるはずもなく、水属性魔法とプレス攻撃が叩き込まれる。


「ま、会話できないよな」


装備《ソロモ=チェスト》に備わる“魔物語理解”スキルは

今のところ発動する気配すらない。


「スラッシュ!」


一閃でHPが約六割まで削れた。


(前は確か三割だった。……成長したな)


スバルはスキル使用を極力控え、拳と間合いでじわじわHPを削り続けた。

そして、あと一撃で沈む――その直前で、


「テイム!」


発動と同時に、スライムロードの身体が弾ける光に包まれ、

ダンジョンへ送られていった。倒すでもなく、逃げるでもなく。


彼は腰を崩すように座り込んだ。


「はぁ~~……疲れた。手加減スキルでも掲示板で探すか」


軽く検索はしてみたが、プレイヤーが“攻撃力を抑える”ための

方法を真面目に議論しているはずもなかった。


(まぁ、誰が自分のステータス下げるかって話だしな)


意気消沈しつつも、二層に戻るのは面倒だったので、一層の町をプラプラすることにした。


『……アンちゃん、ちょっと来な』


「ん? 俺か?」


『そうだぜ、アンちゃん』


声をかけてきたのは、ごろつき風の妙にダミ声な男だった。

案内されるままについていくと、小さな店に辿り着いた。


『らっしゃい、アンちゃん』


そこには、呪われてそうな武具や怪しげなアイテムが所狭しと並んでいた。


「ここは……?」


『俺の店だ。なんか困ってそうだったからな』


(案外親切だな……見た目はクセあるけど)


『で、アンちゃんはどんなモンを探してるんだ?』


「攻撃力を抑えるような……何か、ないか?」


『抑える? 上げるじゃなくてか?』


「ちょっと事情があってな。攻撃力を下げたいんだ」


その言葉に、オヤジ風の男はぽかんと口を開けた。


そんなこと言う奴、見たことなかったのだろう。


『とやかくは言わねぇが……呪われてるモンだぜ?』


そう言って棚から持ってきたのは、手錠に輪をつけたような奇妙なアクセサリー。


『俺が防具作ってた時の、深夜テンション産の逸品だ』


「見ていいか?」


『もちろんだぜ』


ーーーーーーーーーーーーー

【サクリファイスパワー】

- 防御力:+100

- 攻撃力:50%減少

- 呪い効果:ダメージ-100

ーーーーーーーーーーーーー


「これ、攻撃させたくないアクセじゃん」


『耳が痛ぇな……やっぱ夜は寝るもんだな』


「いくらだ?」


『え、ほんとにそれでいいのか? ごみ武器だぜ。金なんて取れねえよ』


何度かやり取りを繰り返し、最終的には300ゴールドでの取引に落ち着いた。

材料費は500ゴールド超だったようだが、スバルは自分の信念で押し切った。


「それと、学生の俺から忠告。徹夜は、いい仕事とぴちぴちお肌の敵だぜ」


『受験生に言われたら仕方ねぇな。気を付けるぜ』


こうして、スバルは「べギル」という名の武器屋とフレンド登録を交わし、

念願の“火力抑制アイテム”を手に入れることができた。


スバルのダンジョン構築は、またひとつ進展を見せる。

正攻法では手に入らない、裏ルート的な解決法――それこそが、彼の進み方だった。


やっぱり準備するのは大切だなぁ

いつものやつお願いします


最新 2025/07/14

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