初戦闘
水場を求めて歩いていた守春だったが、その足が止まった。
――背後でガサゴソと音がしたからである。
(なんだ?人だったらありがたいが、おそらく何らかの生き物だろう)
草木をかき分け、姿を現したのは――カエルに似た生物だった。
(カエル?カエルはたしか鶏のような味がすると聞いたことがあるな)
まとも(?)な食料を発見し、少しテンションが上がる守春。
しかし、その楽観的な思考も長くは続かなかった。
カエルが突然舌を伸ばし、鋭い一撃を放つ。
「っ! そうだ、ここは異世界だったな」
守春の皮膚が裂かれ、鋭い痛みが走る。
――初めての戦闘が始まった。
(武器もないのに、どう戦うんだよぉ!)
HPは「気力回復」のスキルによって回復できるが、攻撃を通せなければ痛みを受け続けるだけだ。
(落ち着け。相手はカエルだ。引きちぎれば勝てる…いや、カエルは毒を持っている可能性がある。直接触るのは危険か?)
ちなみに、試行錯誤している間にも攻撃は続いている。
(防御力は痛みも軽減するのか。落ち着くと、状況がよく見えてくるな)
守春は近くに落ちていた木の棒を拾い上げた。
(木の棒が装備できるのはありがたい)
脳筋の職業は手に装着する武器と盾のみ装備可能だが、木の棒は誰でも使える「特例武器」の扱いらしい。
攻撃力が1上がるだけの、ごみ武器ではある。しかし、今は「素手で攻撃しないこと」が最優先だった。
(というか、気力回復めちゃくちゃ強いな)
本来なら10秒もあればHPが削りきられるはずだったが、守春の場合は「絶対防御」の影響でほぼ無傷で済んでいた。
(カエルの攻撃は2ダメージで、5秒間隔。つまり10秒で4ダメージ。俺のHPは160、その5%は8だから…余裕で回復が追いつくな)
このカエルに対しては、まさに「無傷」で戦闘できる状態だった。
守春は元の世界ではゲームオタクだった。
そのため、スキル構成やダメージ計算に長けていた。
つまり、彼のスキルとステータスの組み合わせは「最適解」だった。
(さて、現状把握はこのくらいにして、そろそろトドメを刺したいな)
痛みがあるとはいえ、実質ノーダメージではある。
しかし、カエルの攻撃はチクチクと鬱陶しく、さすがに我慢の限界だった。
(そういえば、アニメで「攻撃力は投擲したものにも乗る」って言ってたな…なら、この辺の石をっと)
守春は落ちていた石を拾い、カエルへ向かって思いきり投げつけた。
石は綺麗にカエルの頭部へ命中――そのまま、ひっくり返って動かなくなった。
レベルアップ!
スキル「痛覚軽減」を獲得
スキル「投擲」を獲得
「え? 急になんだ?」
守春は「ステータスオープン」と口にした。
目の前に、変貌したステータスが浮かび上がる。
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石谷 守春
年齢:18 性別:男
LV:2
HP:160
MP:10
攻撃力:80
防御力:220(絶対防御)
素早さ:30
賢さ:1(絶対防御)
職業:脳筋
スキル:クリーン / 絶対防御 / 成長数値倍化 / 気力回復 / 狂戦士化
痛覚軽減(new) / 投擲(new)
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(ステータスは乱数とかじゃなくてレベルアップ時に
数値が直接加算される仕組みか、おそらく成長数値倍化の効果かな)
初めての戦闘でスキルを2つ取得した守春はその条件を確認してた
「投擲」は、物を投げてモンスターを倒すことで習得
「痛覚軽減」は、攻撃せずにHP分のダメージを受けることで習得
……という条件らしい。
(俺、めちゃくちゃ運がいいんじゃないか?)
守春は異世界において、「とてつもなく幸運な男」だった。
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最新 2025/06/06