運営達の悪戯心
スキルが発動しないダンジョン――
そんな特異な環境に足を踏み入れたスバルは、
次第にこのダンジョンに順応してきた
(罠の量と質がえげつないな……)
通路には落とし穴。天井からは毒矢。
地雷のような仕掛けが床に並び、
突然、岩が降ってくることもある。
あまりにも古典的すぎるラインナップだが、
それがかえって不気味だった。
(しかも痛覚無効も機能してないのか。…地味に痛ぇな)
スキルが封じられれば、パッシブスキルも例外ではない。
スバルは普段、“痛み”を遮断することで精度を保っていたが、
今は打撃ごとにわずかな硬直が生まれる。
(特に落とし穴……あれだけは、もう勘弁してくれ)
毒矢は見切りで避ける。地雷は視認できた。岩は拳で砕いた。
それでも、落とし穴だけは毎回理性を削ってくる。
ようやく四階層――まだ先は長そうだった。
罠とモンスターの連携による無理ゲー空間をねじ伏せ続け、
ついに十階層目に達した。そこは開けた広場。
足を踏み入れた瞬間、建物の陰から双頭の巨大な犬が姿を現した。
(ボスのお出ましか)
分析している暇もなく、牙と爪を振りかざす双頭犬が襲いかかってくる。
スバルのHPがじりじりと減っていく
(しまった、持続回復も無効化されてんじゃないか)
HPが自然に戻らないことに気づき、慌ててポーションを取り出す。
「鬱陶しいな……」
長時間の罠地獄とスキル制限により、スバルの思考も徐々に荒れていく。
(他のプレイヤーは来ないのか……)
このダンジョンに入ってから、誰の姿も見ていない。
(まぁ、スキル封じって時点で、ろくに攻撃も防御もできず詰む奴が多いか……)
罠に削られ、モンスターに追われ、そして進行不能。
彼がここまで辿り着けたのは、“元々物理特化で、
スキルを効率化ツールとして使っていただけ”だからだった。
(狂戦士の倍率、改めてヤバかったんだな)
今までならとっくに沈めていたはずの双頭犬のHPは、まだ3割残っている。
(唯一の救いは、物理が通ったことか……)
もしこの状況でダメージまで無効だったら、それこそ鬼畜の極みだ。
そうこうしているうちに双頭犬のHPが削れていく
「これで、終わりだぁぁぁ!」
最後の一撃は、ただ拳に力を込めて放った殴打。
その拳が双頭犬に叩きつけられると、敵は光となって消えていった。
スバルはその場に倒れ込み、静かに天を仰いだ。
「……疲れた」
システム音が響き、眼前に宝箱が出現する。
中には、一枚のスキルの書と、一枚の証明書。
ーーーーーーーーーーーーー
スキル:【テイム】
証明書:ダンジョン作成許可証
ーーーーーーーーーーーーー
(……運営、ダンジョン作るの面倒になったのか?)
最初にクリアした者だけが受け取れる特別報酬らしい。
だが、それを見てスバルは別の疑問が浮かんだ。
(じゃあ、2番目以降にクリアしたやつは……普通の報酬ってことか?)
“このダンジョンで倒れたプレイヤーの数に応じて、貢献度が算出され、
後続のプレイヤーには交換用アイテムが渡される”――そういうシステムになっていた。
(一旦帰るか)
スバルはポータルを展開した
「ポータル ライオネル」
町へと戻った彼は、宿屋のベッドに潜り込むなり、すぐに眠りについた。
ちなみにこのダンジョンのクリア者は、スバルを含めて235人だった。
――――――――――――――――――
???A「ちょっと難易度、上げすぎたかな?」
???B「いや、クリア者は予想より多いし……ちょっと簡単だったのかもね」
???C「ひとつ確認。ダンジョン作成許可証はスバルってプレイヤーに渡った」
???D「ああ。今後の彼の動きに注目しておけ」
――――――――――――――――――
???って誰だろうね
最新 2025/07/13




