商人の眼
イヅキの助言を頼りに、スバルはアクセサリー専門の店へ足を運んだ。
「ごめんくださーい」
「へぃ、何でございやしょう」
奥から現れた店員の軽妙な口調に、彼は少しだけ肩の力を抜く。
「アクセをいくつか見せてほしい」
「へぃ、ではこちらに」
案内されたのは、宝石や魔力結晶がずらりと並ぶ展示棚の前だった。
「何かおすすめはあるのか?」
「ワタクシのおすすめは、“真銀の指輪”でございやす」
差し出されたのは、銀色のドクロをあしらった指輪。
どこか禍々しくも洗練された意匠だった。
「……でも、お高いんでしょう?」
軽く冗談をかました彼に、店員はニヤリと笑う。
「いえいえ、そんなことありやせん。たったの一万ゴールドですぜ」
(たけぇよ)
ソロモ=チェストが三万だったことを考えると妥当な値かもしれないが、
それでもポンと出せる金額ではない。
「……値切り、効くか?」
試すように尋ねてみると、店員はあっさりと頷いた。
「初めてのご来店記念ということで、半額でいかがでしょう。
その代わり――この後、素材集めにお付き合いいただきやす」
「それで頼む」
彼はその条件を受け入れ、五千ゴールドを差し出すと、
素材採集のためにイヅキと訪れたあの洞窟へ再び向かった。
数時間後。
「ありがとうごぜぇやした」
「……正直、五千ゴールド分の働きができたとは思ってない」
彼がそう言うと、店員はやや真面目な口調で答えた。
「それは違いやす。ワタクシが提示した条件をこなした、
それだけで契約は成立しておりやす。金額の多寡など関係ありやせん」
その対応に、スバルは静かに頷いた。
「なるほど。それなら、ありがたく受け取っておくよ」
「へぃ、それが一番でさぁ」
こうして彼は、初のアクセサリー装備を手に入れた。
【真銀の指輪】
効果:攻撃に斬撃ダメージを加える
(拳が武器の俺にとっては、これは本当に助かる)
彼の攻撃は基本的に“衝撃”属性に分類されるため、
物理属性の幅が増えるこの効果は極めて有用だった。
(……あの店員、観察眼がすごいな)
スバルが剣を持たないことや、装備タイプを一言も伝えていないのに、
ここまで適した効果を勧めてきた。この商人、ただ者ではない。
(それにしても、
斬撃を加える手段が“スラッシュ”しかなかった俺にとって、この指輪は革命的だ)
現在、彼の主力属性は衝撃、斬撃、砲撃の三種。
魔法は微々たる威力、呪いはMP消費過多、
状態異常は拳には付与しづらい。結果的に選択肢は限定されていた。
それだけに、物理属性の幅が自然に広がるこの指輪は、
彼にとって想像以上に価値があるものだった。
(……明日は、二層にでも行くか)
その決断には、一つの覚悟がにじんでいた。
エリアボスの討伐。それを乗り越えてこそ、次の世界が見えてくる。
夜風が街を撫でるなか、スバルは静かに拳を握り締めた。
あの店員やるなぁ
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アドバイス等お願いします
最新 2025/06/30




