理沙視点②新装備
理沙は、屋敷の奥に設置された魔法陣を踏み、転移先に降り立った。
次の瞬間、視界いっぱいに広がる鳥居と鈴のある神社のような空間。
風の音すら静まり返っている。そんな場に、
彼を待っていたのは――巨大な狐だった。
(……九尾かな?かわいい)
多くの人が“かっこいい”と形容するであろう鋭い顔立ちも、
理沙にはどこか愛らしく見えてしまう。その感覚がちょっとズレていることは、本人も理解していた。
そして、戦いが始まった。
「加速!」
理沙の体が一瞬で軽くなり、風のような動きで九尾へと接近する。
「パワーアタック! テレポート!」
力を乗せた一撃とともに、すぐさまテレポートで後方へ。
近接一撃離脱――これが今の理沙のスタイルだった。
九尾は尻尾を一振りすると、複数の火の玉を生み出して飛ばしてくる。
「スラッシュ!」
剣に力を込め、火の玉を叩き落とすように一閃。
炎と理沙の刃が空中で衝突し、相殺された。
「トリプルスラッシュ! 乱れ切り!」
続けざまに放たれた怒涛の連撃に、トリプルスラッシュの効果が乗り、
ダメージは瞬く間に跳ね上がる。九尾のHPバーがごっそり削れた。
その瞬間、辺りに赤や青の人魂が現れ始める。
(……行動パターン、変わった?でも攻撃、通る?)
理沙は試しに斬りつけるが、手応えがない。ダメージエフェクトも、HPバーも表示されない。
そして気づく――
(あれ……逆に、九尾のHP、少しずつ回復してる……?)
次の瞬間、理解が追いつく。
(この人魂、ドレイン効果があるんだ。攻撃するたびに、九尾に回復が入ってる!)
理沙が再度本体に斬り込もうとした瞬間、九尾は距離を取るように大きく跳躍し、身をひいた。
(攻撃してこない……ってことは、あの火、無視してよさそう)
「テレポート!」
一瞬で距離を詰めて、再び剣を構える。
「パワーアタック!」
真芯を捉えた一閃。光の余韻だけを残し、九尾は霧のようにその場から消えていった。
「やったー!」
理沙は両手を挙げ、素直な歓喜をあげた。
そして目の前に現れたのは、一つの宝箱。
中には、濃紺の装束と、煌びやかな指輪が入っていた。
(“深海の服”に、“狐の嫁入り”?……名前センスはアレだけど、性能めっちゃいいじゃん!)
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【深海の服】
防御力 +50/素早さ +70
〈装備スキル〉海神/液状化
〈エンチャントスキル〉破壊不可
【狐の嫁入り】
テイムモンスターとの共闘が可能になる装備
・召喚:モンスター呼び出し
・休息:モンスターを退却させる
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(これ……テイムなんてあったんだ、めちゃくちゃ良い……!おみやげ確保ー♪)
宝箱を手にした理沙は、その場でくるりと一回転。
笑みを浮かべた彼の横顔は、どう見ても女の子そのものだった。
(……よし、今日はここらへんで切り上げ――って、
そうだった。ログアウト、できないんだよね)
一転して現実の重みを思い出した理沙は、少しだけ苦笑する。
それでも彼は、宝箱を背中のポーチにしまうと、淡々と歩き出す。
向かう先は――街の宿屋。その背中は、どこか軽やかで、次の冒険を待ちきれないようにも見えた。
理沙の冒険はこれからだ!
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最新 2025/06/30




