理沙視点①強くてニューゲーム
理沙以外のクラスメイトは、それぞれが生産職になったり、
着々とクエストをクリアしたりしています
そのうち登場すると思いますが、司と、理沙視点が
主になります
理沙が他の生徒たちと別れてから、数日が過ぎた。
町の門を飛び出し、草原を駆けるその姿に迷いはなかった。
双剣の重みにも、現実と異なる重力にも慣れてきている。
彼の中ではすでに“この世界で生きる”覚悟が固まっていた。
(……ここがAWOだって分かってたら、もう少しお気に入りのスキル選んだんだけどなぁ)
それでも十分すぎる成果は出ていた。
理沙は必要最低限のスキルからスタートし、
数日で着実にレベルを上げていた。
クリエイトファイアで野営地を作り、
加速とテレポートで奇襲と回避をこなし、
トリプルスラッシュで敵を一掃。成長数値倍化は
効率を倍に引き上げ、まるで熟練プレイヤーのような動きだった。
(まぁ、取得ルートは知ってるし、スラッシュとか風切りもあとで覚えに行こー)
そんな風に鼻歌まじりでレベル上げを続けていた理沙は、ついに一つの決断をする。
「行こうか、妖狐の館」
第二層にある未踏のダンジョン。誰もまだクリアしていないその場所は、挑戦者を待っていた。
AWOには特殊な報酬システムがある。
初回クリア、かつ単独攻略であれば、その報酬は破格となる。
(よーし、豪華報酬目指して頑張るぞー)
妖狐の館――そこは、まるで昔話の世界を
そのまま現したような異空間だった。
ぬりかべ、河童、一つ目小僧、火の玉。
懐かしくも厄介な敵たちが、理沙の進路を阻んでくる。
特にぬりかべは厄介だった。壁と同化して存在を消し、
範囲に入った瞬間に圧し潰してくる。
何度かダメージを食らいながらも、理沙は淡々と対処していった。
成長とともに増えたスキルも充実していた。
忍び歩き、乱れ切り、バックステップ。
戦闘の幅が一気に広がり、理沙の双剣は躍るように妖怪たちを斬り裂いた。
そして――
「いよいよ、ボス戦かぁ」
中央に浮かんだ魔法陣が、ゆっくりと光を放つ。
その中心に立つと、理沙の身体が浮かび、光の柱に包まれて転移が始まる。
辿り着いたのは、古びた神社のような静謐な場所。
霧がかった鳥居の奥、御神木の根元に、それはいた。
それは、大きな狐だった。
まっすぐに理沙を見つめる黄金の瞳と、
ふさふさとした尾が何本も揺れている。
神々しさと殺気が同居するその気配に、理沙の背筋が自然と伸びた。
「――やるしかない、か」
彼は双剣を手に取ると、静かに構えを取る。
神社に満ちていた空気が一瞬で張り詰める。
戦いの幕が、いま静かに上がる。
理沙も結構なプレイヤーです。
もちろん司のライバルであり
一番の親友です
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最新 2025/06/30




