決勝の相手
ルシフス学院の夜は、いつもより静かだった。
闘技大会も、明日の決勝を残すのみ。
学院中が熱気に包まれているはずなのに、
トドロキの部屋だけは、妙に冷えていた。
(決勝……相手はヴァルゴ。
王女の騎士で、学院序列第3位。
剣技と魔法を扱う魔法剣士ってところか。)
トドロキは窓辺に座り、拳を握った。
その手には、伝説の小手、素手喧嘩の
二つのグローブが付いている
『トドロキ…今いい?』
メイプルがそっと扉を開ける。
その手には、温かいハーブティー。
「……気が利くな」
『明日、決勝…落ち着きがいる』
「落ち着いてるさ。……武者震いってところだろうよ」
メイプルは隣に座り、静かに言った。
『あの変人…強い…この間余裕があった』
「余裕か……俺にはないな」
サマナが部屋に顔を出す。
『トドロキー!王女から伝令ー!』
「またか」
サマナが封筒を手渡す。
中には、王女システィの筆跡でこう記されていた。
『私の側近は今までのような者と比較にはなりませんわ
私が太鼓判を押した貴方であれば巨大な壁程度破れますわよね』
トドロキは静かに封筒を折りたたみ、拳を握る。
「破るか……簡単に言ってくれるな」
ティナノが壁にもたれながら、ぽつりと呟く。
『ヴァルゴは、王女の剣だ。
……王家の剣を、砕けるのか?』
「……さぁな」
夜は深まっていた。
だが、トドロキは、まだ眠らなかった。
決勝戦――その前夜。
拳と剣が、まだ交わらぬまま、静かに刃を研いでいた。
闘技大会もいよいよラストですな
ということでまた次回
サラダバー
編集① 2025/09/05
最新 2025/09/07




