闇討ち
闘技大会を翌日に控えたトドロキは、
ランニングトレーニングの最中に
何組もの刺客に行く手を阻まれていた。
(なんなんだこいつら……明日試合だってのに)
仕方なく、近くを通りかかった店に身を潜める。
『いらっしゃいませ……おや?見ない顔ですね』
「あぁ、ここに来たのは初めてだ」
『そうでしたか。席はご自由にどうぞ』
「ありがとう」
(喫茶かと思ったが、雰囲気はバーの方が近いな。
さて、追っては来ていないようだし、
なにか注文してみるとしようか)
「ここは何を売ってるんだ?」
『はい、喫茶《鶴の家》では、コーヒーを始めとし、
ワインやビールなど様々な食品を販売しております』
「なるほど。じゃあコーヒーを頼む」
『豆は何にいたしましょう?』
「マスターの好みで頼む」
『かしこまりました。少々お待ちください』
「いい雰囲気の店だな」
『ありがとうございます。お客様方が安心できる空間を意識しております』
「そうか、いいマスターじゃないか」
『ありがとうございます……お待たせいたしました。
こちら《マスターの気まぐれコーヒー》でございます』
「ありがとう」
『それではごゆっくり』
(ほほう……香ばしいコーヒーのいい所が
真っ先に脳に送られる……こういうのでいいんだよ)
『お兄ちゃん、見ない顔だなぁ』
「常連さんですかな?えぇ、今日初めて来た新参者ですよ」
『そうけぇ。じゃあマスター、彼の会計は俺が持つぜぇ』
「そんな、悪いですよ」
『お兄ちゃん、人の善意ってもんは受け取っておくもんやぁ』
「……分かりました。では有難くいただきます。
マスター、あの方の呑んでいるものをいただけますか」
『わかりマスター』
『ブフッ』
(あのおっさん今吹いたよな……しっかし、
久々にコーヒーを飲んだが、体に入ってくるカフェインの感じ
……元軽度の中毒者としてはたまんねぇ)
トドロキが優雅に珈琲タイムを満喫している一方——
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『くそっ!どこ行きやがった!』
『このままじゃ……姉御にボコボコにされちまう』
『急がねぇとな……』
『誰か探知魔法使えるやつ居ねぇのか?』
『……』
『なるほど、誰もいなさそうだね』
『くっそぉ、結局手当たり次第か』
『まぁいいじゃん、さっきまでと変わらないし』
『にしても、エアスト=トドロキはどこに隠れたのかな』
『教えてあげようか?』
頭上から不意に響く声に、ルシフス学園の生徒たちは反応する。
『え?今どっから……』
『やぁ、僕は鳴神。さっきから君たちの
かくれんぼを見てて楽しそうだと思ってね。声をかけたんだよ』
『エアストの居場所がわかるのか?』
『そうだね。トドロキ君は《鶴の家》っていう喫茶店にいるね』
『そうか!ありがとう!』
『どなたか存じませんが、助かりました!』
『よし!じゃあすぐ行って、エアストを捕まえようぜ』
『じゃあ頑張ってねー』
『……居なくなったかな』
『信用していいのか?』
『……行ってみればわかるでしょ』
『すぐ逃げれるようにしとこうぜ』
ルシフス学園の生徒たちは、《鶴の家》へと向かっていった。
そして、トドロキの静かな珈琲時間は、
もうすぐ騒がしい再会によって、幕を閉じようとしていた。
しばらくぶりの脳筋です
ようつべ見てたらスマホが壊れまして
2、3週間ほどインターネットと離れていましたね
あと、マクロプラズマに感染したりと
色々あった12月でしたということで(?)
また次回、サラダバー!
最新 2025/09/04




