スキルと職と森林
死神が、転移後の世界について話していると、
一人の女子生徒が震える手を挙げた。
彼女は高橋美保。このクラスの半数以上の男子が
密かに恋心を抱く、憧れの存在。しかし、
今はそんな雰囲気ではない。美保の瞳には、
かすかな不安の色が見えていた。
「えっと…」
『はい、なんでしょう』死神は静かに応じる。
「わ、私たち戦争なんて経験してないし、
戦える人なんてほとんどいないと思います…」
「確かに、俺たちは平和な環境で生きてきた…」
「そうだ!俺たちの平和を返せー!」
興奮した生徒たちが口々に叫び、教室がざわめき始めた。
死神はその様子をしばらく見ていたが、やがて考えるように頷いた。
『でしたら、あなたたちに職業を選ぶ権利と、
ランク1からランク5までのスキルを
それぞれ一つ取得できるようにしましょう。
これなら異世界でも生きていけますよね』
ざわめく生徒たちの間に、一瞬の沈黙が広がる。
(スキル?職業?どういうことだ?)
『注意してください。どれを選んでも一度決めたら変更はできません』
『職業によって装備できるものが異なりますし、
スキルの選択によって生存率も変わるでしょう』
『"マイステータス"と唱えれば
自身のステータスを確認できます。
"マイジョブ"と唱えれば職業を選択できます』
「「「マイステータス!」」」
「「「マイジョブ!」」」
生徒たちが恐る恐る唱え、彼らの目の前にステータスウィンドウが浮かび上がる。
その様子を見ながら、俺は心の中で(マイステータス)とつぶやいた
_________________
大久保 守春
年齢:18 性別:男
LV:0
HP:15
MP:0
攻撃力:3
防御力:6
素早さ:4
賢さ:12
職業:無職
スキル:無し
_________________
(ふむ…「ダイラヤード」という世界がどんな場所なのか
分からんが、この能力値では生き延びるのは厳しそうだな)
守春はスキル選択の画面に目を移す。
そこには「生存」「戦闘」「生産」「育成」など、
様々なジャンルのスキルが並んでいた。
(スキルはランクが高いほど重要なものらしい。
選択ミスは死に直結しかねない。さて…どうするか
ランクは、生き延びるために重要なものほど数字が大きい。
ほかの生徒たちは直感で選んでいるが、職業にはどんなものがあるんだろうか?)
(マイジョブ)
守春が思考しただけで、目の前に職業選択画面が広がった。
並んでいるのは「戦士」「魔術師」「盗賊」など、ゲームでよく見る職業だ。
しかし、それだけではない。妙に個性の強そうな職業もちらほら見える。
だが、上級職らしきものは見当たらなかった。
(職業によって能力値が違うのか…)
目を走らせるうちに、一つの職業の能力値に釘付けになった。
その職業は脳筋だった
(脳筋って職業なのか...能力値はHP、攻撃力、防御力に振られていて、
MPと賢さ、素早さが極端に低い。完全な前衛特化型か…
魔法には詳しくないし、やるなら真正面から戦うスタイルがいいか)
迷うことなく守春は「脳筋」を選択した。
ーーーーーーーーーー
職業:脳筋 に決定
ーーーーーーーーーー
次はスキル選択だ。
ランク1では生活系のスキルが多い。
「おい死神、ダイラヤードの空気や水は地球と同じか?」
『場所によりますが、あなたたちは整備された地域に転移します〉
「なら、浄化系が有用だろう…どれがいいんだ?」
画面をスクロールすると、目に止まった。
「クリーン」――簡単な浄化ができるスキルだ。
ランク1にクリーンを選択した
ランク2はステータス強化系が中心。
(防御力を上げたいところだが…おっ、よさそうなスキル発見...絶対防御?)
「絶対防御」——値が2以上あるステータスが1になる代わりに
防御力が二倍になる
(……賢さはもともと低いし、多少減っても問題ないか。防御力2倍の方がデカい)
ランク3を確認すると、戦闘ではなく成長補助系が多い。
レベルアップ時のステータス上昇値を増やすスキルがあるようだ。
(これは後々有利になりそうだな。「成長数値倍化」にしよう)
ランク4は戦闘系が多い。
(攻撃スキルがないし取るか?いや…回復手段がないのはまずいな)
見つけたのは**「気力回復」**。
効果:常時、10秒ごとにHPが5%ずつ回復する
(防御型ならこれで耐久力を上げるのが理想だな)
いよいよ最後のランク5。
上位スキルが並ぶ中、考えた。
(攻撃スキルが一つもないのはまずいか?)
物理・魔法・特殊と分かれていたが、賢さが低いため物理一択だった。
脳筋専用のスキル群を確認し、装備可能なのはナックル系。
盾も使えるようだ。
最終的に選んだのは、「狂戦士」
効果:攻撃力が最大5倍まで上昇。ただし、防御力が半減し、HPが30秒ごとに10%ずつ減少する。
(防御半減は痛いが、気力回復で補えれば問題ない)
しばらくすると死神が声を出した
『職業とスキルを選んだ人は“ステータスオープン”で、自分のステータスを確認できます〉
(やはり、考えるだけで画面が開く)
生徒たちの多くが口に出していたが、中には念じるだけで開く者もいた。
俺だけではないらしい。
『さて、準備が整いましたね。転移を開始します。目を閉じてください〉
特にすることもない。目をつむる。
『では、始めます。あなたたちに、幸福あれ〉
(お前が言うなって思ってる奴、絶対多いよな…)
次に目を開けると、そこは広大な大森林だった。
投稿頻度はバラバラで、作品に関することであればコメントにて
教えていいただけるとありがたいです。
この作品を応援してくださる方は、星5評価にしていただければ
やる気が出ます。今後ともこの作品をどうかよろしくお願いします。
最新版 2025/05/21