料理人
人としての過ちを起こしかけたトドロキは、
今は寮備え付けの風呂で心身を整えていた。
(フゥ〜、風呂はいい……なんか毎回言ってる気がするな。でも、やっぱいい)
湯船にはフローラルな香りが漂い、
落ち着くはずの空間がどこか落ち着かない。
(何故こうも落ち着けないのだろうか……まぁ、だいたい分かるが)
精神年齢は20を超え、もはや30に近い。
だが肉体は10歳。
このギャップが、風呂場の空気を微妙にする。
(なんにせよ、早く出ないとな。長風呂の癖が抜けてない)
湯船に浸かると、時間を忘れてしまう。
それがトドロキの“日本人らしさ”でもある。
(よし、出るか)
風呂を出ると、すぐにルームメイトたちの声が飛んでくる。
『お、トドロキくん出てきたね』
『トドロキか、遅かったな』
『お腹空いた』
「またせたな」
(ったく、風呂くらいゆっくり入らせろって)
『トドロキくん』
「ん?」
キラキラした目で見つめてくる3人。
(……はぁ、こいつらはいつもいつもこんな目で人を見やがって。
……わかりきってるが一応聞いておくか)
「どうせあれだろ?作れってんだろ?」
『『『そうだよ』』』
「なるほどな、少し待ってな。《分身体》!じゃ、あと6人ほど頼む」
『了解した、《分身体》』
『《分身体》』
分身体が分身体を呼び、トドロキは8人に分身した。
「お前ら!やることはわかってるな!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
それぞれが自分の役割を理解し、黙々と動き始める。
(こいつらほんとかしこくて助かるぜ。
同じ性格趣味嗜好の同一人物だから、何も言わなくていいんだもんな)
『第八のトドロキはさ、いつもなにしてんの?』
『第七も同じだろ?呼ばれるまで意識なんてねぇんだ。
何か出来るわけが無いだろう』
『そりゃそうだ』
『『だっはっはっは』』
『笑ってないで働け、第七と第八』
『第二さんは真面目だねぇ、もっと気ぃ抜かねぇと』
『そうそう』
『お前らな…』
「そうか、なら第七と第八は狩当番な。適当に頼むわ」
『『了解』』
『すまないな、《本体》』
「お前は第二だったか?いつもすまんな、あいつらのお守りさせて」
『なに、俺の仕事をするだけだ』
「働きアリの法則とはよく言ったものだ」
『何割かはサボるってやつか』
「あぁ、2割よく働き、6割が普通に働き、残りの2割がサボる謎の法則だ」
『やはり、分身体の分身は本体とは少し離れてしまうようで、
本体が常に隠してる部分が出てしまうのだな』
「まぁ俺だって人間だから、本性を隠しながら生きてんだ」
『そうだな、その気持ちよくわかる』
『臭い話はそれくらいにしたらどうだ』
『すまない第三。本体も愚痴に付き合ってもらって、ありがとうな』
「なに、気にするな。とっとと片付けて飯食おうぜ」
『『了解』』
トドロキたちは、夕餉の準備へと再び動き出す。
風呂上がりの静けさは、分身たちとの賑やかな日常へと変わっていく。
美味しい料理作れる人に作ってもらいたい
(家だと自分の味付けが濃いと言われる
まぁたしかに濃いんだけど
それが好きだから仕方ないよね)
そういうことでまた次回
最新 2025/09/02
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