厄日Ⅲ
喧嘩を終え、ルシフス学園寮へと戻る途中のトドロキ。
空気が騒がしくなり、騎士団が集まってくる。
(なんか騎士団集まってきたんだけど)
『我がサンブルク王国騎士団長である!
貴様、我が王国に仇なす者か!』
「いきなり出てきて何用だ。俺はただの学生だよ」
『学生がなぜ《骨龍》を連れているのだ!』
「ん?なんの事だ?」
騎士団長が空を指す。
(やべ、勝手に消えたと思ってたけど上にいたのか)
「確かに、あれは俺が呼んだ《不死骨龍》だ。
だが特に害を与えるつもりは無い」
『ならばなぜ頭上に飛ばしているのだ!』
「俺が召喚解除を忘れたから。《反サモン(アンチサモン)》:スケルトン」
『なっ……』
「これでいいだろ?」
『あの巨体を一瞬で……』
「そろそろ寮に戻りたいんだが、いいか?」
『ダメだ。本部に戻って事情聴取だ』
その時、澄んだ声が響く。
『お待ちなさい、騎士団長』
騎士団員たちが一斉に跪く。
『システィ様』
トドロキは声の主を見て、思い出す。
(この女、さっきの)
『何事ですか?』
『この者が怪しげな魔物を従えていたので、
質問をしていたところです』
(何言ってんだこいつ)
『まぁ、エアスト様ではありませんか』
(ん?なぜ家の家名を知ってんだ?)
「先程は出過ぎた真似を致しました。ここにお詫び申し上げます」
『貴様!頭が高い!』
『お黙りなさい』
『……ハッ』
『エアスト様、怪しげな魔物とは?』
「あぁ、それならさっき召喚解除したさ。
少しドンパチしてた時の名残とでも言っておく」
システィは静かに頷く。
『それならば問題ありません。騎士団長、
エアスト様は私の客人です。これ以上の詮索は不要です』
『……承知いたしました』
(助かった……いや、なんで助けられてるんだ俺)
『エアスト様、どうかお気をつけて』
「……あぁ、ありがとう」
トドロキはその場を後にし、ようやく寮へと戻るのであった。
(骨龍の解除忘れただけで
騎士団と貴族令嬢に囲まれるとか……この世界、ほんと面倒だな)
「それと、この団長様が勝手に骨龍とか抜かしてたけど
不死骨龍だぞ。うちの子は」
『貴様…私を侮辱するか……』
『お黙りなさいと申しませんでしたか?』
『……申し訳ありません』
『あなた達は帰りなさい』
『しかし、この者』
『聞こえなかったのですか?』
『……くっ…失礼いたします』
(嬢ちゃんすげぇー)
『エアスト様、ここは目立ちます
1つお茶でもいかがですか?』
「あぁ、いいだろう」
(ちょうど視線が気になっていたところだ)
トドロキは権力者と思われる者に連れられ
ルシフス寮近くの喫茶店へとやってきた
(本日何度目かの飲食店
ただし全ての場所で面倒事に巻き込まれてるが…
…あれか、厄日ってやつか)
トドロキはそんなことを考えていた
『我が騎士が申し訳ないことを致しましたね』
「我が?どういうことだ」
『エアスト様にお伝えし忘れていましたね
私は王位継承権第1位、
マリアット=A=サンブルク=システィです』
「王女様だったか」
(やっべ、めっちゃタメ語使ってたじゃん)
『そのままで結構ですよ
私の恩人ですので…それに、なかなか対等に話てくださる方は
そうそうおりませんので』
「そうか、わかった」
『エアスト様、お名前をお伺いしてもよろしいですか?』
「失礼、名乗りがまだでしたか
私はトドロキ=エアスト、ただの学生です」
(あれ?初めて会った時名乗った気がするけどな)
『トドロキ様、闘技大会に出てみませんか?』
「そのナントカってのは?」
『父上様が年に1度開催する大会です
闘技大会優勝者ともあれば
数多もの冒険者や王宮兵からのスカウトがあるでしょうね』
(正直いらねぇ副賞だが
王女様に誘われちまったらな。俺の首が飛びかねん)
「なるほど、では私に参加をしろと?」
『強制ではありません。
ですが私と致しましては参加していただきたいですね』
(逃がさねぇつもりだな
しかもあくまでも任意参加ってことにしたいらしい)
「なるほどね
ならうちの学校長にでもお話くだされば
私が立候補しましょう」
『ありがとうございますトドロキ様』
「要は済んだかな?」
『近々またお会いできればいいですね』
「そうですね、では失礼いたします」
『えぇ、またいずれ』
システィは笑顔で手を振っている
(しまったな、面倒な役を引き受けてしまった)
トドロキは重たい足で寮へと戻るのである
そろそろ寮に戻してやるかぁ()
サンブルグって地名があるらしいんですが
本作品とは全くの無関係なので気にせずお読みくだせぇ
ということでまた次回、サラダバー!
最新 2025/08/25




