お嬢様視点
ふたつの面倒事に巻き込まれたトドロキが、
拳で騒乱を鎮めていたその頃——
馬車の中では、サンブルク王国の王女、
マリアット=サンブルク=システィが静かに窓の外を見つめていた。
「爺、先程の方は?」
『トドロキ=エアスト。エアスト一族のご子息です。
初代当主は《次元の旅人》であり、
代々長男には“ニホン”なる国の言葉で名付ける習わしがあるようです』
「そうなのですね。エアスト一族の階級はいくつですか?」
『第8階級です。元々は第5階級でしたが、
多額の納付金と民からの支持、
そして《人工遺物》の所持により昇格したようです』
「貴族としての地位もあるのですね」
『お嬢様、まさかとは思いますが、あの者に——』
「帰りましょうか、爺」
『……承知しました、お嬢様』
(爺は真面目で、常に私を気にかけてくれる。
このことも必ずお父様に報告することでしょう)
『お嬢様、お父上にご報告は——』
「報告することなどありませんでしたよ」
(お父様に知られてしまえば、
エアスト様にご迷惑をお掛けしてしまいますもの)
その時、馬車の外で騒ぎが起きる。
『お嬢様、絶対に馬車から出てはなりません』
「どうしたのですか、爺?」
『盗賊ギルドの者が、何者かと揉めているようです』
「きっとエアスト様ですね。困っている民に手を差し伸べたのではないでしょうか」
『アルベルトやウルベルクの可能性もあります』
(アルベルトとウルベルク……次のお見合い相手。
あの者たちが平民に手を差し伸べることなど、万に一つもありませんのに)
『どうやら終わったようです。旅の者が盗賊ギルドを制圧したようです』
(でしたら、エアスト様以外あり得ません。
アルベルトもウルベルクも、実戦経験などありませんでしょうし)
『では出発いたします』
「えぇ、わかりました」
(エアスト様……私、マリアット=サンブルク=システィは、貴方のことを逃しませんよ)
システィの瞳は、王都の灯りではなく、トドロキの背に向けられていた。
馬車は静かに、サンブルク王国の中心部へと向かっていく。
○○視点系久しぶりな気がする
……いや、私が投稿していなかっただけか
2話連続投稿ということでまた次回
サラダバー!!
最新 2025/08/25




