力を持つ者の苦痛
スバルたちがクラスメイトの元へ戻ると、
シェアハウスの大広間では――
命をかけた枕投げが、今日も元気に開催されていた。
『後ろががら空きだぜ?スバル‼ くらえ!【ファイナルクラッシュ】!』
「おっと、普通に危ないんだよな…ん?ファイナルクラッシュ?」
スバルが首をかしげると、そっと声をかけてきたのは、
眼鏡をかけた知的な雰囲気の少女――江藤 翼。
枕投げにはついていけていない、シャイなクラスメイトのひとりだった。
『スバル君、それね?みんなのテンションが上がってきたときに、
スキルみたいに技名を付けるようになってきたの』
「翼か、つまりは、ただのカッコつけってことか?」
『うん』
「そうか…まぁ、ガチのスキルを枕に載せるくらいだし、おかしくはない…のか?」
「いや、十分おかしいと思うよ?だってさ、あの辺見てみ?みんな忙しそうだよ?」
信介が指さした先には、回復魔法をかけ続ける者、
大量の汗をかいて部屋の隅で倒れている者、
さらには分身している者までいた。
「…信介、俺向こう手伝ってくるわ」
「スバルって、なんかの回復スキル持ってたっけ?」
「あっ、ない…」
辺りを沈黙が支配した。
結局、スバルはダンジョンポイントを使って大量の中級ポーションを購入。
それらをけが人に向かって投擲するという、シンプルかつ危険な救助活動が始まった。
だが、問題はその“投擲”だった。
スバルの攻撃力が乗ったポーション瓶は、もはやガラスの塊。
雹やがれきとは比べ物にならない破壊力で、救助者のHPを確実に削っていった。
数人のクラスメイトが所持していた、
一日に10回しか使えない使用制限付きの蘇生スキルによって、
かろうじて死者は出なかった…が――
もしそれがなければ、スバルは数人の命を奪っていた可能性すらあった。
幸いにも、大量購入のおまけでポーションの効果が強化されていたため、
最終的にはHPの回復に成功。
だが、その一件のせいで――
スバルは枕投げへの参加を、正式に“禁止”された。
それはまた、別のお話である。
枕投げに参加してたらどうあっていたのやら…
もしかしたら、デスゲームになっていたかも?
最後に一言
枕投げってなんだっけ?
最新 2025/08/24




