温泉同好会
イベントの打ち上げが終わり、スバルは疲れを癒すために
ギルドホームの浴場へと足を運んでいた。
(へぇ、この世界は水着の着用がマナーか)
脱衣所には、貸し出し用の水着が整然と並べられていた。
スバルはその中から無難なものを選び、着替えて浴場へと入る。
(おー、露天風呂か。いいね)
一通り体を洗い終え、湯船に身を沈める。
湯気が立ち上り、肌に心地よい熱が染み渡る。
「ふぃー」
思わず漏れた声に、自分でも少し驚いた。
(久々に風呂に入ったな。まさか、これほどまでとは…)
この家は、ギルドメンバーとの打ち上げのために選んだものだった。
広い空間を確保するためだけのつもりだったが、
浴場、トイレ、キッチンなど、まるで現実の一軒家のような設備が整っていた。
(運営には感謝しなきゃな)
この世界では、通常のプレイヤーにとっては食事も排泄も不要。
だが、スバルたち――転移者にとっては、そうはいかない。
(死神は有能なんだか、無能なんだか…わからねぇな)
彼らをこの世界に送り込んだ張本人は、
しりぬぐいのために様々な手を回しているらしい。
だが、スバルたちはその事実をまだ知らない。
(さて、あいつらも呼ぶか)
“あいつら”とは、クラスメイトたちのこと。
普段は小部屋の風呂で済ませている彼らにとって、
このような浴場は転移前以来だった。
『へぇ~ここがその温泉か』
『結構いいところじゃね?しかも、露天だしさ』
「おっ、来たか」
水着姿のクラスメイトたちが次々と現れる。
かつて宿泊学習で見た姿とは違い、腹部にはしっかりと筋が入っていた。
(おぉ、レベルアップは体にも影響すんのか…あれ?俺の方は変化がない…)
『おー!スバル!相変わらずいい筋肉をしているな!』
声をかけてきたのは斎藤信介。
スバルの数少ない友人であり、信頼できる人物の一人だった。
「お前もな」
信介は小柄ながら、筋肉はバキバキ。
二人はかつてジムに通い、共に鍛え合った仲でもある。
湯気の中、スバルたちはつかの間の温泉気分を味わった。
戦いも、イベントも、ギルドの順位も――今だけは、湯の中に溶けていくようだった。
温泉っていいな~
高評価、拡散、ブックマーク
その他もろもろお願いします
最新 2025/08/24




