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【旧】転生先が現代日本人ってふざけんなっ! って思ったけどそれが普通だし案外充実してる  作者: せん
幼稚園年少

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#073 ぜんざいとおしるこの違いは今じゃない

 マコトが孫々(まごまご)しているその頃――


「おい誰だよこんなところに大タルG置いたのは」

「すまん俺だ」

「バカなのか兄貴は」

「そう言うミズキも何でホットドリンク飲んでるんだ?」

「間違えただけだ」

「はぁ……、兄貴たちはバカだな」

「そういうお前はとっととこっちに来いよ」

「コウお前今どこ…………釣りは一人のときにやれよ!」

「無駄に使う誰かさんがいるから、調合素材がいるんだろ」

「……」

「足引きずり始めたら呼んで」

「「オイ!!」」


 とあるお宅では、三人の兄弟(マスミ・ミズキ・コウ)が仲良くゲームをして遊んでいた。


 そんな楽しそうな彼らの輪に、自分も入りたいと年の離れた小さな子が絡む。


「うー……、オレもやりたい!」

「もうちょっと大きくなってからな」

「お前にはまだ早い」

「お前もホントはまだ早いけどな? 俺もだけど……」

「俺たちはとーちゃんに許可もらってるからいいんだよ」

「えー!!」


 寒くなって、家に引きこもりがちになっていたのもあったのだろう。

 普段何かと遊んで(構って)くれる兄たちは、ここ最近は新しい狩り(ゲーム)に忙しかった。


 一人暇と体力を持て余した末っ子は、他に遊んでくれそうな人物の元へと向かう。


「とーちゃん、オレもあれやりたい!」

「……もうちょっと大きくなってからな」

「うー……、じゃあそといこ!」

「……すまんな。とーちゃん今ぎっくり腰なんだよ」

「えー!!」


 こちらも寒くなって、冷えによる筋肉の柔軟性が低下していたのだろう。

 可愛い可愛い末っ子の願いを叶えたいのは山々だが、寄る年波には逆らえず、うつ伏せにソファに転がる父――祐二(ユウジ)

 長子と末っ子の年の差が十歳以上というのは、親にもそれだけの(リスク)が発生する。


「ほら、もうすぐおやつだからそれまで大人しくな?」

「うー……、わかった」

「良い子だ」

「まことが『おまえはとーちゃんかーちゃんのいうことをきけ』っていってたから!」

「あぁ、マコト()()()にはいっぱいありがとうしないとね」

「よーちえんいったらオレがいっとく!!」

「あぁ、よろしくたのんだ」

「まかせろ!」


 末っ子かつ念願だった娘ということもあって、どうしても甘やかしがちになっていたユウジだったが、妻サナエに窘められながら最近は少しずつ改善しているようだった。


 そしてその娘も、幼稚園に通い始めてから成長が著しい。

 運動能力に磨きがかかるのはもちろん、まったく興味を示さなかった勉強も自分からやりたいと言い出すようになった。

 仲の良いお友達もできたようで、嬉しそうに遊びに行く姿を見ると、父としては少しさびしくもあった。



***



「アンタらお餅何個入れるー?」


 ジュンが一人大人しくゴロゴロと床を転がり回っていると声が飛んでくる。


「俺は四個」

「じゃあ俺五個!」

「六個!」

「と思わせて八個」

「そんなにあるわけないでしょ!」


 食べ盛りの兄弟たちは、自分が一番食うと言わんばかりにその数を競い合い、末っ子はその甘い匂いに釣られて、サナエがいるキッチンへと向かう。


「ジュンはどうする?」

「うーん……、じゅっこ!」

「アンタ十個が何個か分かってるの?」

「もちろん! いち、にー、さん、しー、ごー、ろく、しぃち、はち、きゅーのじゅーだ!」


 両手をぱーに広げて掲げる末っ子。

 ()()の影響で、数を数えるのは大の得意だ。


「分かってるならいいけど、ほんとに食べられるの?」

「あきらめたらそこでしあいしゅーりょーだ! ますにーちゃんもいってた!」

「アンタは二個ね」

「えー!?」


 足に抱き着く末っ子をそのままに、サナエは焼きあがった餅を粒あんが入った汁の中に入れていく。

 全員分が用意ができる頃には、食い意地の張った子どもたちは自分の席へとすでに着席している。


「ねーねー、こーにーちゃん、おしることぜんざいってなにがちがうんだ? てれびではおしるこっていってたぞ」


 色々と教えてくれる一番年の近い兄に、興味が尽きない末っ子が問う。

 豆を食べたらお腹から芽が出ることも、プールが菌の巣窟であることも知っている三男(コウ)に。


 だがコウは母親の前で余計()なことは言えない。こってりと絞られることは身をもって知っている。()()がサナエに情報をリークしていたりいなかったり……聴取されていると言った方が正しいか……


「……ミズ(にー)、何が違うんだ?」

「…………兄貴」

「………………オヤジ」

「……………………食え!」

「わかった!!」


 ぜんざいが冷めるからと、まず食べることを優先した父の言葉に、素直に従う末っ子。

 フォークで器用に餅を掬い、かぶりついては伸びる姿を楽しみ、そしてもきゅもきゅと口を動かしその甘みと触感を味わう。


「それにしても、ジュンはマコトちゃんのこと大好きだよな」

「うん! まことはすっげーんだぞ!」

「家に誘ったりしてもいいんだぞ?」

「いいのとーちゃん!?」

「あぁ。いつもお世話になってみたいだし、とーちゃんも親御さんにも挨拶しないとな。――もちろんお前らは外行けよ?」

「やったー!」

「しかし陽ノ森幼稚園は凄いよな。ジュンの体力に付いていける女の子の友達が二人もいるなんてな……」

「ふたり?」

「え? あぁ、マコトちゃんとスズカちゃんだろ?」

「ちがうぞとーちゃん! すずかはおんなのこだけど、まことは()()()()()だぞ?」

「「「「…………ぇ?」」」」

「ぷーるのとき、とーちゃんとおんなじのついてるのみたもん! まことはこーゆーこといっちゃだめっていってたけど! こんなんだった!」

「「「「…………」」」」

「とーちゃんこんくらい!」

「「「!?」」」

「あっ! ぜんざいとおしるこって――」


 その光景に一人サナエは、どうしたものかと小さくため息をついていた。


 ちなみに彼女は事実を隠していた訳ではない。ただ言う機会が無かっただけ。

 小さな子に対してであれば、男女問わず親しみを込めて”ちゃん”付けで呼ぶ人もいることだろう。


 決して面白そうだと思って、男たちの勘違いを正さなかったわけではない。


 そしてそのため息も、娘の発言内容によるものなのか、男たちのこれからによるものなのか、誰も分からない。


読んでいただきありがとうございます。


運動会のビデオって、上手く撮れるとは限らないですよね。

それに自分の子以外は案外見てなくて…


ちなみに作品舞台はちょうど真ん中あたりです。

※物語の進捗度の話ではありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 남자인 줄 알고 쥰이 나올 때마다 스킵했다만.. 다시 보러가야겠군요
[一言] 作者殿、わかるでござるよ…! 「友達も撮って!」って言われてもどの子が友達なんだ‥!?ってなりますよね笑笑
[一言] ジュン女の子だったの……!? ……ハーレム?
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