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【旧】転生先が現代日本人ってふざけんなっ! って思ったけどそれが普通だし案外充実してる  作者: せん
幼稚園年少

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#063 しりとり

遅くなり申し訳ございません。

色んな意味で長くなりそうなので分割させていただきます…

 世間がクリスマスに沸き出す24日のお昼過ぎ。

 僕はジュニアシートにすっぽりと収まっていた。夏場は蒸れて不快感を感じてしまうが、この時期には妙に温かくて心地好い。


 隣には同じくジュニアシートに座るスズカ。

 左腕を伸ばして、ミオさんから新たに授けられたと思われる(恋人繋ぎ)で僕の手をガッチリと握り、ご機嫌に足をプラプラとさせていた。


 そんなスズカの装いは、薄いピンク色をベースとしたセーターにフリルが付いたスカート。防寒対策にニット帽と毛糸のタイツを着用している。アウターのダッフルコートは、今は車の中ということで膝の上に掛けている。


 幼さの中にちょっと背伸びしている感じがまた可愛らしい。

 さすがミオさん!となりそうなところだけど、今回はスズカ自ら選んだらしい。最終チェックはミオさんがしていたようだけどね。もちろんスズカを褒めることも忘れない。


 いつも以上におしゃれに気を使っているスズカ。


 それもそのはずで、僕たちは今日、吉倉家(ユウマの家)で開かれるクリスマス会に招待されている。


 参加メンバーは……まぁ行けば分かるか。


 そういうわけで現在、僕たちは車で10分ほどの距離にある吉倉家へと向かっていた。


 ハンドルを握る母上も、白いハイネックニットにカーキ色のスキニーパンツを合わせて、さりげなくスタイリッシュかつ上品に決めている。

 相変わらずお綺麗です。


 あと一応僕も紹介しておくと、スズカと色違いの濃紺のセーターにチノパン。あと丈短めのコート。


 ちなみに戸塚夫妻は共に不参加。

 下の娘たちがまだ二ヵ月ちょっとということもあり、お出かけをするのは難しいと判断したようだ。人もそこそこ多く集まるし、慣れない環境だと子も親も大変だからね。


 スズカに申し訳なさそうにしていたミオさんとミツヒサさんだったけど、当の本人はけろりとしていた。まぁ親しい母上と僕もいるし、もしかしたら幼稚園に行く感覚に近いのかもしれない。


 今も最近スズカと通園バスでせがまれやるようになった()()()()に興じている。母上を含めた三人で。


「――”すず”!」


 別にスズカが自己紹介をしているわけではない。一文字足りないし。

 ”す”から始まる言葉で”鈴”と言っただけだ。そしてまた”ず”か……


「……ず、ず……”頭突き”」

「う~ん、じゃあ”恐竜”で”う”」

「……う、う、う~……”うんどーかい”」

「……”銀杏(いちょう)”」

「……”海”の”み”」

「……み、みず! まーくん、つぎは”ず”」

「……」


 幼稚園に通い始めて早八ヵ月。

 スズカの覚えた言葉もだいぶ増えてきた。


 ひらがなやカタカナを覚えてからは、耳からだけでなく目からも学べるようになって、さらにそのスピードは加速しているようにも思える。


 たまに、いつ誰から覚えたの?という言葉もあったりして、ドキッとする場面もある。まぁミオさんが第一容疑者なんだろうけど。第二は……まぁいいじゃないか。


 そんな現実逃避をしているが、実を言うと”ず”から始まる言葉を探している最中だったりする。


 別に言葉が出てこないわけではない。

 ただ色々と事情があるのだ。


 できるだけスズカが知っているであろう言葉を使いたい。

 知らなくても、スズカに上手に説明できる言葉を選びたい。


 あと母上の目もあるしね。

 難しかったりマニアックな言葉は選べない。

 最近手遅れな気もしているけど、諦めなければなんとかなるさ。


 そして何よりも、もう”ず”で回ってくるのが五回目なんだ。

 しりとりで”る攻め”の次に厄介だと思われる”ず攻め”。スズカが意図しているとは思えないが、無駄に自粛していることもあって、言葉選びに慎重になってしまう。


「……まーくん、”ず”だよ?」

「じゃあ……”図星”」

「……まーくん、”ずぼし”ってなに?」

「…………おかーさん、”図星”って何?」


 自分で言っておきながら、とも思わなくもないが、そんなところもまた()()()()()()のではないだろうか。


 僕のすっとぼけを特に気にした様子もなく、母上は助け舟を出してくれる。


 一緒に意味を推理してみたり、例え話を交えながら分かりやすく説明してくれた。ちなみにスズカの推理は”にぼしのおともだち”だった。決してボケてはいない。本人は至って真面目なのだ。可愛いね。


 そうして”図星”という言葉をなんとなく理解したのか、スズカが早速復習に入る。


「……まーくんはすーのことすき?」

「え、うん……。もちろん……?」

「ずぼし?」

「……そうだね……。図星になる……のかな」


 僕の答えがお気に召したのか、まんざらでもなさそうに口をもにゅもにゅとさせる。それに合わせて繋いでいる手もにぎにぎと。


 クリスマスのせいか、ちょっと空気が甘ったるい。換気が必要かもしれない。でも窓開けると寒いから我慢するしかないか……


「……おかーさん、次は”し”だよ」

「ふふっ、そうね。じゃあ……”しじみ”で”み”」

「……み、み、み、……”みみず”!」

「……また”ず”……。すーちゃん狙ってる?」

「……?」

「ふふっ……」


 スズカがしりとりで()攻めて来るようになってしまった。

 もしかして、母上がそうなるように誘導……?


 いやまさかだよね……


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] マコト君も頑張ってお母さんに楽をさせてあげるのでしょう。邸宅でなくても程よい大きさの家にスズカちゃんと結婚して、お母さんと一緒に住めると良いですね。
[一言] 濁音や半濁音を付け外し出来るルールしかやった事無かったので「ず」攻めなんてものがあったのですね。 てっきり「す」にする事も可能で無意識に「鈴華」と「好き」と言わせようとしてるのかとばかり。
[一言] 和やかでいいですね。 ちなみにぷ攻めも強いらしいですよ。 面白いです。これからも頑張ってください
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