#058 母の悩み
あけましておめでとうございます。
今年もすーちゃんたちをよろしくお願いいたします。
母になってもうすぐ丸四年が経つ。
片親ということで大変なこともたくさんあった。
未だに実家とのわだかまりも残ったまま。なかなか上手くいかず、心が折れそうになることもあった。
けれど、良き隣人たちに恵まれた。
そして何より息子と過ごす日々は楽しくて、私の心の支えになっている。
振り返ればあっという間だった。
そしてまーくんはあっという間に成長していく。
親バカと言われてしまうかもしれないけれど、まーくんは本当に良い子に育ってくれている。
家では自分からお手伝いをしてくれる。
教える必要があったり、自分でやってしまった方が早かったり、二度手間になったりと、子どものお手伝いは正直大変という話も聞くけれど、まったくそんなことはない。
むしろまーくんが手伝ってくれないと、仕事や資格の勉強との両立が難しかったり……
ミオがまーくんの助けを求める気持ちはよくわかる。なんだか悔しいからミオには絶対に言わないけど。
知能はと言えば、幼稚園年少さんとは思えないほど。
ひらがなカタカナの読み書きは完璧。自分の名前であれば漢字だってマスターしている。さらには英語まで覚えている模様。会話に至っては大人顔負けの理解力。親としては情けないんだけど、何をどうしたらこう育つのか正直私が聞きたい。
約束事はきっちりと守るし、他人への気遣いもできて、お友達もたくさんできた。
果てはお友達の親御さんにも気に入られてしまって、挨拶もしたことが無いはずなのに私まで友好的に接してもらえる始末。
運動だって得意。
かけっこはクラスでもトップクラスに入るし、体育の授業でもお手本のように上手だとリコ先生からお褒めの言葉をいただいている。
まーくんの良いところをあげ始めたらキリがない。
私にはもったいないほどできた息子ではあるけれど、残念ながら今はそれが裏目に出ている。
誕生日プレゼントが決まらない。
まーくんは物を欲しがらない。
もっと言えばわがままを言わない。
家計的には非常にありがたいけど、気を遣わせてしまっているんじゃないかと心配になってくる。
まだそういう年じゃないだけなのかな?
でもまーくんを抱きしめていれば満足そうにしているすーちゃんでさえ、おままごとセットだったりお洋服だったりを欲しがる。
今後成長するにつれて「あれが欲しいこれが欲しい」と駄々を捏ねるようになるのかもしれないけど、まーくんがそうなる未来が想像できない。
それとなくまーくんが興味を引くものを調べるため、お店にも足を運んだ。
おもちゃ屋、本屋、家電量販店、百貨店、ゲーム販売店、靴屋、衣料品店……
ただそのどれも、手をつないで公園を散歩している時のテンションと大差ない。
でも一回だけ興味を引いたものがあった。
家電量販店で、新しい掃除機に買い替えようと行った時のことだったかな。
ロボット掃除機を興味深そうに見ていた。
でもね、さすがに4歳の誕生日にロボット掃除機は……
それにもう買っちゃったし。
奮発して一番良いやつ。
それからまーくんは、よくロボット掃除機が掃除している姿を眺めている。気に入ってくれているみたいで後悔はしていない。その時のまーくんがまた可愛くて……
でもね、さすがに二台目は……
……。
……だめだよね?
まーくんなら何をあげても喜んでくれそうな気はするけど、適当にはしたくない。私の誕生日の時のプレゼントも、色んな人に相談して、悩んで、頑張ってくれたみたいだから。
まーくんから貰ったしおりは大事に使っている。
手帳に挟んで、毎日毎日手に取ってまーくんの愛を感じている。
だから、まーくんにも私の愛が伝わるようなものを贈ってあげたい。
平日は仕事で一緒にいてあげられない時間が長いから……
なんか私って重い女みたいな感じになってたりする……?
……だ、大丈夫。
これは家族愛。あくまで親子愛。
子どもを想うのは母として当然だよね!
だけどプレゼントが全然決まらない。
――ということをミオに話した。
「私にまかせなさい! 恋愛マスターたる私にッ!」
「恋愛マスターって……。ミオってミツヒサさん以外に付き合ったことあったっけ……?」
「……」
ミオとは小学校以来の付き合いだけど、男性とお付き合いしたという話は聞いたことがない。噂はいくつかあったけど、一緒にいた私が流されることはなかった。
「れ、恋愛相談はたくさん受けてきたし、カップルもたくさん成立させたよ? それにモテモテだったし?」
「自分で言う? 確かにそうだったけど」
ミオは確かに美人。羨ましいくらいに。
その上、美に対する努力も怠らないので、学生時代は先輩後輩同級生教授サークル仲間その他の男性から人気だった。その分敵も多くて私まで大変だったけど……
「それにまーくんとは恋愛じゃないって」
「……ゴメン、そこは普通に間違えた」
親子愛だからね?
「こっちにいるときのまーくんの行動はヒントにならないかな」
私の知らないだけで、何かしらの要望をあげているかもしれない。
私の知らないまーくん、か……
「うーん……。すーちゃんと遊んでるか、すーちゃんとお手伝いしてくれるか、すーちゃんと双子を見てるか……」
「常にすーちゃんと一緒だね」
「もういっそ、すーちゃんをプレゼントする? すーちゃんも喜びそうだけど」
「すーちゃんウチの子になる?」
「ゴメン、やっぱりそれはなし」
失言だったと慌てるミオ。
将来も二人が好き合ってるかどうかは分かんないしね。今見てる限りはずっと続きそうだけど。
「去年は何あげたんだっけ?」
「積み木」
「あぁ、あれね。幼稚園にもある……」
「うん」
まーくんの三歳の誕生日は板状の積み木を買ってあげた。
ちなみに一歳の時はベビーリュック。
お出かけする際に、まーくんがティッシュや哺乳瓶を入れて大活躍した。
二歳の時は、立方体の各面の色を揃えて遊ぶ立体パズル。
小さな手で回すのはちょっと大変そうだったけど、楽しそうに遊んでいた。
そして、そのすべてを「宝物」って言って今でも大事に使ってくれている。
……もうほんと良い子だよね?
その後もミオと楽しく雑談に興じながら、まーくんの誕生日プレゼントを悩み続けた。
「もう、まーくんに直接聞いてみたら? 何が欲しい?って」
「うーん、出来ればそれは最終手段にしたいかなー。まーくんのびっくりする顔も見たいしできるだけ秘密にしたい……」
「(……もしかしてすーちゃんの一番のライバルってアカリなの?)」
「え、なんて?」
「何でもない」
読んでいただきありがとうございます。
マコトの誕生日プレゼント…




