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#003 天使降臨!

 (マコト)は母を送り出す。

 行ってらっしゃいのキスはない。さすがに。でもチークキスはある。

 母の機嫌がいい時は、そのままほっぺにキスをしてくれる。


――ちゅっ!


 真面目そうな顔してなかなか大胆だ。今日()機嫌は良さそうだった。

 母上愛しております。


「いってらっしゃい」

「行ってきます。いい子にね」

「うん」


 母が出ていく。バタンと扉が閉まり鍵が外からかかり、家に一人。

 前世では一人は当たり前だったが、今は少しばかりさみしい。


 だがすぐにそのさみしさは吹き飛ぶ事になる。


 30分ほどテレビを見ていると、鍵が開く音がする。

 僕はテレビを消して玄関に向かう。


「おはようございます」

「おはよう、まーくん。しっかり挨拶出来てえらいねー!」


 そう言って褒めてくれるのは、隣の部屋に住む女性――戸塚美緒(トツカミオ)さん。

 どこかのアイドルと言われてもおかしくないほど美人で、ナイスバディ。

 うちの母(アカリ)が真面目系美人だとすると、ミオさんは可愛い系美人。うん、美人はいいね。


 ミオさんは母の小学校時代からの親友で、いわゆる幼馴染。

 母が一人で僕を産むことになったときもいろいろ大変お世話になって、このアパートに住んでいるのもミオさんに紹介されたからだった。


 なぜそのミオさんが我が家(八代家)の玄関を開けられるかというと、鍵を持っているから。当たり前だけど。ちなみにスペアキーを渡し合っている仲だ。

 持つべきは良き隣人。前世の僕にはなかった存在だ。


 そしてミオさん。既婚者である。そして()がいる。

 母が復職で悩んだとき、ミオさんには僕と同い年の娘が居るので、一緒に面倒を見るということを提案された。


 そういうわけで、幼稚園に入園できる3歳になるまでは、母が仕事に行っている時間、僕は戸塚家へお世話になることになっている。

 ミオさんは僕にとって、もう一人の母のような存在だ。


 そしてさみしくない理由はこの戸塚家に()使()がいるからだ。


「すーちゃんただいま~。まーくん来たわよ~」


 ミオさんが玄関を開けながら中にいる人物に声をかける。


 その言葉に反応し、トテトテと短い廊下を走ってくる幼女。だが幼女にとっては長い道のり。


 僕にたどり着く直前で躓いてしまったので、慌てて助けに入る。――ミオさん、僕が必ず助けるからって任せっきりにしないでいただきたい。僕まだ二歳児ですよ?


 抱き着くような形となっている幼女が見上げてくる。


 幼女は僕の顔を確認するとひしっと抱き着いてきて、腹に顔をうずめてぐりぐりした後、もう一度見上げてにへらと笑いかけてくる。


「おかぇりなしゃい!」

「うん、ただいま」











――ズッキューーーーーーーーーーン!











 な?


 天使だろ?


 僕だけに向かって無邪気に笑いかけてくるんだぞ?


 懸命に走ってくる姿が愛おしい!

 力いっぱい抱き着いてくる姿が愛おしい!

 笑顔が愛おしい!


 我が愛しの天使様!


 荒んだ心も強制的に癒やされる!


「あらあら、相変わらずすーちゃんはまーくんのこと大好きね~」


 天使がミオさんの言葉にコクリと頷く。


「すぅーはまーくんしゅき(好き)だいしゅき(大好き)。むふぅ」


 天使は落ち着いた様子で淡々と言う。少々舌足らずなところがもうたまらない。

 ちなみに「むふぅ」で僕の胸に顔をうずめてきている。照れてる顔も見せておくれ!


 はいもちろん僕も大好きでーす。

 

 あ、やばい、鼻血出そう。押さえねば。天使の頭にかかる……


 天使の名前は戸塚鈴華(トツカスズカ)

 僕より少しばかりお姉さん。スズカは4月生まれ、僕は12月生まれ。学年は一緒。


 少し流したぱっつん前髪に、スズカお気に入りのおさげ髪。


 ミオさん譲りのかわいらしさのある顔なのだが、基本的には大人しい無表情?……というかぽけーっとしていることが多い。それがまた可愛いんだが。

 

 死んだ目をする僕にちょっと雰囲気似てるところがある……気がする。もしかして真似してる?

 ちなみに僕は基本的に無表情(ポーカーフェイス)だ。母とミオさんと天使様(スズカ)の前でだけ、少しだけ感情を出す。なんというか、これに関しては前世の影響がいろいろ大きいらしい。


 それは置いといて。


 スズカとは僕が生まれた時から一緒にいる幼馴染の関係だ。

 母はミオさんと協力しながら僕らを育ててくれている。今は我が家(八代家)が頼ってばかりになっているので、僕が頑張らせていただきます。


「じゃあ、まーくん。すーちゃんのこと見ててもらっていい?」

「うん、まかせて」

「すぅーはまーくんに、みててもらぁうー」


 ミオさんに面倒見てもらうと言っても、ミオさんにも家事という仕事がある。

 その間、僕がスズカの面倒を見ることで、そのお手伝いをするのだ。


 スズカと一緒に遊び始めて、仲良くなるのは一瞬だった。泣いているのをあやしていたら、そこで好感度がMAXになったっぽい。ちょろいが大丈夫か? あと僕の死んだ目は関係ないらしい。むしろ魅力的? モテ期。二歳児で?

 そこから何度か一緒に遊んでいるうちに、僕がスズカの面倒を見れることをミオさんが見抜き、今に至っている。

 

 しかしながら、どうもミオさんの僕への信頼度が異常すぎる気がする。二歳児に二歳児の面倒を任せるのは正しいのか? もしかして中身アラサーだとバレてる?


「まーくんはすぅーのことしゅき?」

「もちろん、すきだよ?」

「むふぅ」


 彼女(スズカ)に出会えたことで、女神様への不満はすでにない。むしろ非常に感謝している。

 ありがとう。女神様!

 えっと、女神イヌ……なんとか様!


読んでいただきありがとうございます。


次回⇒#004「天使との一日」2020/10/15 18:00更新予定(サブタイは予告なく変わる可能性があります)


改稿履歴

2020/10/18 11:00

 ミオは休職中という設定でしたが、結婚して専業主婦になった、という設定に変更します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戸塚?ヨットス○ール nice boat!に一歩前進
[良い点] 2歳くらいはいちばん素直で可愛い [一言] 細かいとこは極論、家によるから気にせんでいいと思う
[良い点] まじでおもしろいww もうすでに好きw
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