#029 共同作業
スズカとミツヒサさんと共に公園から戸塚家へ帰宅。
玄関をくぐるとミオさんが声をかけて来る。
「「「ただいま~」」」
「おかえりなさい。先にみんなでお風呂入っちゃって」
というわけでスズカとミツヒサさんと入浴。
ミオさんか母上が良かったなんて……思ってないよ?
三人そろって洗面所兼脱衣所へ直行。
スズカは迷わずすっぽんぽんに。
羞恥心などまだない四歳児。ミオさんの淑女教育もここまでは及んでいないのか?
そしてミツヒサさん。デスクワーク中心で飲みニケーションも頑張ってるはずなのにすらっとしてる。
腹筋も……え? 男の情報はいらない? あぁそう。
脱いだ服はまとめておいて浴室へ。
ちなみに戸塚家も八代家も体を洗ってから湯船につかる派。
そういうわけでまずは頭から。三人並んで頭を洗う。
「髪を梳かしてから頭を洗おうね」ってミオさんがおっしゃるので、スズカと僕はいつも通りクッションブラシを手に。
梳かし終えればシャンプーを泡立てて馴染ませるように洗っていく。
ミツヒサさんは豪快にわしゃわしゃと。
そして僕らより早く終えるとスズカのお手伝い。スズカの髪は長いからね。
だが自分の髪を洗う時とは違って怖ろしく丁寧に。雑にやるとミオさん怒っちゃうから……。
洗い終えるとトリートメント。ちゃんと子供用。
なんというか前世では縁のなかったものがたくさんあって大変。
そういうわけで、スズカも頑張ってるけどまだ一人で頭を洗うのは難しい。
頭が終われば次は体。泡もこもこ。
体洗いの最難関は背中。単純に手が届かない。タオル使えば良いんだろうけど手洗いだ。
そういうわけで。
「……まーくんのせなかあらってあげる」
「ありがと、すーちゃん。お願いするね」
「まかせて」
洗いっこ。
スズカが手の平で僕の背中を洗ってくれる。
脇の下近くとかちょっとこそばゆいけど気持ちいいね。癒されるわー。
お返しにスズカの背中を洗ってあげる。
「……まーくん、くすぐったい」
「ごめんね? ……これでいい?」
「……むふぅ」
お気に召したよう。
「パパも洗って欲しいな~……?」
いちゃいちゃしているとミツヒサさんから寂しそうな声が。
そういうわけで三人並んで背中洗い。
ミツヒサさんは背が高いので滑り止めマットの上に直座りする。
スズカがうんしょうんしょとミツヒサさんの背中をタオルでこする。
ミツヒサさんはタオルで洗わないと気が済まないタイプらしい。
「まーくんもてつだって」
「あいさー」
スズカと一緒にタオルを広げてうんしょうんしょと共同作業。
「パパおわり」
「ありがと、すー、マコト」
ミツヒサさんが名残惜しそうにタオルを受け取る。
うん、もっと洗ってもいいけどさすがにね。
最後にスズカと僕はミツヒサさんに頭から湯をかけてもらってから湯船にイン。
普段は浴槽に紐で一つに括られまとめられたペットボトルが沈められていてその上に乗っている。お湯の節約+踏み台。
だが今回は三人で入るということでサルベージ。スペース的な問題とお湯が零れてしまう。
その代わりミツヒサさんの膝の上に座っている。
スズカと僕はそれぞれ左右の膝の上に乗り、上下に揺さぶられて遊んでいる。
「そい!……そい!」
「ぉーー、ぉーーー」
「……!……!」
スズカめっちゃ楽しそう。バランス感覚すごい。
僕も楽しいがちょっと怖いんだけど。
そして結構お湯が零れてるけど、後からミオさんに怒られない? 知らないよ?
最後に顔を洗ってから風呂から上がる。
ミオさんと母上は仲良くキッチンで料理の仕上げ中なので、ミツヒサさんの筋トレにお付き合い。
腕立て伏せをしている上に乗る。
「……くっ」
いつもはスズカだけが乗ってるみたいだが、今日は僕も相乗りさせてもらっている。
スズカに手を引かれたので拒否権はなかった。申し訳ない。
「パパがんばる」
スズカがミツヒサさんの頭をペシペシ叩きながら応援。いや応援じゃない。頑張ることを強要されている。
「ふんっ……」
………パパ頑張った。風呂あがったばっかりだけどもう一回入ったほうがいいんじゃ……。
「できたわよー」
筋トレを手伝って?いるとミオさんからお声がかかる。
ミツヒサさんの両脇に抱えられて運ばれ着席。
メニューはチーズドリアにミートローフ、コブサラダ。
子どもの好きそうな料理たちが大皿に乗せられてテーブルの上に並べられる。
「「「「「いただきます」」」」」
結構な量があるが、ミツヒサさんが良く食べるので問題ない。
主にドリアとミートローフ。野菜も食べたほうが……。ほら、ミオさんにサラダ入れられて。
スズカもミオさんに取り分けて貰いながら。
ちゃんとバランスよく食べて偉いね。ドリアをふーふーしながら食べる姿が癒されるわー。
僕も母上に取り分けてもらう。単純に手が届かんのだよ。
「これおいしい」
ミートローフ初めて食べたけどおいしい。トウモロコシと枝豆の触感が面白い。
中に半熟卵が入ったパターンもある。ハンバーグとは違った楽しさがあるね。
「それアカリの自信作よ~?」
「おかーさん、これおいしい」
「ありがと。また今度作ってあげるね」
嬉しそうに母上が僕の頭を撫でてくれる。
ちなみにデザートはフルーツ入りのヨーグルトだった。
試食のおばちゃんを思い出した。
食事後もみんなでワイワイしゃべりながら楽していると、うつらうつらとスズカが船をこぎ出す。
今日はだいぶ遊んだからね。かく言う僕もそろそろ眠い。
そういうわけで今日はお開き。
母上にだっこされて家に帰り、歯磨きを終えるとすぐに瞼が下がってくる。
「おやすみ、まーくん」
「……おやすみなさい」
充実した一日でした。
スズカが寝静まった戸塚家。
「みーくん、お風呂のお湯少なかったんだけど?」
「……ごめんなさい。はしゃぎすぎました」
「みーくんがあっためてくれたら許してあげる」
「まかせなさい!」
なんて会話があったりなかったり。
読んでいただきありがとうございます。
晩餐回と言っておきながらお風呂回に。
そして重要なことを忘れてました。
スズカの誕生日。
完全に失念しておりました。天使様申し訳ございません。
というわけで次回は時を戻して誕生日会。




