#025 家族の時間(前)
遅くなり申し訳ありません。気づいたら日付が変わって…
戸塚家が家族でお出かけとなった。
そういうわけで、今日は母上と二人っきりの休日ということになる。
休みの日は戸塚母娘と一緒に遊ぶことが多いので、丸一日我が家だけの時間となると、なんだかんだで久しぶりで新鮮な気持ちだったりする。
さて、今日は母上と何して過ごすか。
GWといえば戸塚家のように家族でお出かけとかよくあるイベントだろう。
なのでGW前に母上から聞かれはしたんだけど……。
「まーくん、どこか行きたい所ある?」
「…………………………ない、かな」
「まーくん……」
母上に心配そうな表情をさせてしまった。申し訳ない。
突然問われてパッと答えが出なかったんです。
いや、よく考えても思いつかない……。
前世では仕事が忙しくて遊びに行こうなんて考えることもなかったし、一緒に遊びに行くような友人もいなかった。
会社を辞めてからも家に引きこもって、独身貴族を謳歌していただけ……。
遊びに行くという発想がなかったような気がする。
僕、あのまま生きてたらどうなってたんだろ……。
背筋に冷たいものが……。
……。
止そう。すでに新しい人生を歩み始めているんだ。
前世とは違って今は充実してるんだ。子どもの頃ならみんなこんな感じかもしれないが。
で、行きたい所。
「母上と一緒ならどこでもいい」なんて答えは母上困るよね。晩御飯何がいい?なんでもいい……ってやつと一緒で。
……。
でもやっぱり思いつかない。
なんというか、子どもの体で思うように動き回れないからか、どこかに行きたいと思う気持ちが抑制されてる気がする。
一歩が短すぎるんだよね。
そういうわけで家で遊ぼう。
母上だって貴重な休みなんだから休もうよ!
「おかーさんと家で遊びたい」
「いいの? 水族館とか遊園地とか……」
まるでデートの行先だね。制服デートとか?
母上に着せて……?
……。
ふむ、落ち着け。
というか母上、お出かけしたいのかな。
「おかーさん遊びに行きたいの?」
「へ……?」
あ、違うっぽい。いやしかし……。
「おかーさんの行きたいところに行きたい」
「…………」
……やはり親子か。
まぁ三歳児を連れてとなると行ける場所も限られるだろうし、しょうがないよね。
「おかーさんと一緒に家で遊ぶ」
「……そうね。そうしよっか」
母上も仕事で疲れてるだろうから、家でゆっくりしていただこう。
良い落としどころじゃないかな。
というわけでテレビゲームをして遊ぼう。現代っ子だね。
意外かもしれないが、我が家には据え置きのテレビゲーム機がある。
……ミオさんが置いていったものだが。
ミオさんが雑誌の懸賞で当てたのだが、すでに戸塚家では同じものを持っていて、八代家にお邪魔した時でも遊べるようにと設置して行った。
「当たるわけないじゃん」って軽い気持ちで応募してみたら当たっちゃったらしい。
ちなみにミツヒサさんがゲームをやる方なので、戸塚家には最新ハードが揃っている。
戸塚家にお邪魔したときにはお借りして遊ぶこともある。いつもありがとうございます。
我が家にゲーム機がやってきてから、休みの日は母上と一緒に遊ぶことも多い。
母上はあまり自分からゲームをやる方ではないが、ミオさんと付き合う程度にはやっていたそうだ。
やり込み勢ではないが、ゲーム音痴というわけでもない。
そういうわけでコントローラーを手に持ってスタンバイ。
みんなご存じあのスティック型コントローラーを握ってストラップをしっかり止めて。
我が家にあるゲームは複数人で遊ぶものしかない。
僕も母上も一人でゲームをやらないし、スズカとミオさんと一緒に遊ぶのだから、自然とそうなるよね。
「まーくん、何やりたい?」
「うーん……。じゃあボウリング」
いろいろとスポーツが収録されているゲームを起動して、ボウリングをすることにした。
実際のボウリングはボールが重すぎて三歳児には大変だからね。落としたりして怪我とか怖いし。
「えいっ」
僕は軽くコントローラーを振る。
ボールが真ん中やや右へと転がっていく。良い位置。
「あー……」
「おー、まーくん惜しい」
ピンが右端に二本残ってしまった。
続けてもう一回振るが、端のピンだけ飛ばしてスペアとはならず。
「むぅ……」
「惜しい惜しい」
母上が慰めるように、コントローラーを握っていない手で僕の頭を撫でる。
そこまでショックは受けてないけどね? でも気持ちいのでもっと。
続いて母上の番。
力まず綺麗に腕を振り抜く。ボールはヘッドピンへとぶつかり、そのまますべてのピンをなぎ倒す。
テレビ画面にでかでかとストライクと表示される。
「おかーさんすごい!」
「ありがと、まーくん」
母上が照れくさそうに笑いながら空いてる手で僕とハイタッチ。
まさにリア充の遊び。相手は母上で、場所は家だけど。楽しいから問題ない。
ちなみにこのボウリングのゲームが一番上手なのはミオさん。
なんかスピンを使いこなしてストライクを連発してくる。大人げない。とりあえずスコアが200を切ったところを見たことがない。
次点でミツヒサさん。スコアは200に届きそうで届かない。
普段からゲームをやっていても、実際に体を動かすのは勝手が違うらしい。
その次に母上。スズカや僕に気を使ってくれているようで、スコアは毎回120前後。
最後にスズカ。まぁまだ三歳だしそんなにうまくいかないよね。
でもミツヒサさんとミオさんの血を引いているのか、はたまた家で練習しているのか、スコアはちゃんと50は超えて来る。運が良ければ100に届くこともある。
僕? たぶん本気でやれば母上以上ミツヒサさん未満だろうけど、スズカといい勝負だよ。
勝ちたいんじゃなくて楽しみたいからね。負け惜しみではないよ?
特別なことは何もないけど、誰かと一緒に遊ぶって楽しいね。
前世では忘れてた感覚だから、改めてそう思う。
「まーくん、惜しいッ!」
「くっ……」
……コントローラー壊れてるのかな?
読んでいただきありがとうございます。
次回⇒母上との休日後半戦を描く予定です。
強制残業が決まってて十中八九また日付跨ぎます。すみません。




