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【旧】転生先が現代日本人ってふざけんなっ! って思ったけどそれが普通だし案外充実してる  作者: せん
幼稚園年中

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#183 いじわるな先生たち

やっと書けました…

 幼稚園児とは思えぬ連携でアイを捕獲しスタンプを押してもらった子どもたちは、それぞれの親たちの元へと戻って来る。


「アイせんせーつかまえたー!」

「オレもオレもっ!」

「頑張ったね!」

「かっこよかったよ~」


「ママ! アイせんせつかまえれたよ!」

「すごいじゃん!」

「うん!!」


「かーちゃん、どうだッ!!」

「はいはい、凄い凄い」


 皆が皆、()()()捕まえたと自慢する子どもたち。

 もし誰か一人が活躍しアイ先生を捕まえていたら、これほどの数の笑顔を見ることはできなかっただろう。


 そんな中、唯一表情が変わらないマコト。いつも通りと言えばいつも通りだが、内心は歓喜ではなく安堵に包まれていた。


(ちょっと危なかったな……)


 同じ方向に向かって走らせていたが、円陣が縮小して人口密度が上がっていく中で子ども同士ぶつかりそうになる場面が何度かあった。最後もみくちゃになる前に、マコトもスズカの手を引き離脱した。


 幸いにも誰一人転んだり怪我したりすることもなく済んだが、この作戦は非推奨だな、と立案者はスズカと手を繋ぎながら一人反省会を終える。


「ママ! スタンプもらったよぉ!」

「良かったわね~。アイ先生もちゃんと捕まえれたね~」

「うん! かんたんだったぁ!」

「そ、そうね……」


 スタンプカードを見せびらかしてくる娘の無邪気さに、マユミの笑みが若干引きつった。


 そのすぐ隣では、口をとがらせて戻って来る娘にミオが首をかしげる。


「あれ、すーちゃんどしたの?」

「……ジュンとタイショーがさくせんどおりにうごいてなかった」

「そうなの?」

「ん」


 マコトの指示通りに動いていなかった二人にご不満のようだ。


「すーちゃん、あの二人がああなるのも作戦通りだったからさ。気にしなくていいよ?」

「……じゃあいい」

「すーちゃんありがとね」

「、ふ♪ …………まーくん、ここおそと」

「そうだったね」

「でもちょっとだけならいい」

「じゃあもうちょっとだけ」

「ん♪」


 感謝の言葉と共にハグして頭を撫でれば、スズカのご機嫌もすぐ元通りになる。


 そうして無事二つ目の隠しポイントでスタンプを手に入れたマコトたちは、引き連れる――と言うよりは群がる友人たちの数を増やして下山を始める。


 ちなみに、ジュンやタイショウといった体力お化けたちは競うように先に行ってしまった。それに付き合わされる親はたまったものではないだろうが、頑張れとしか言いようがない。


 マコトたちは釣られて行き急ぐこともなく、マイペースにてくてくと小さな歩を進めていく。


 登りで通った”自然コース”とは違い、下りは”ハイキングコース”と名が付く通り、道が整備され傾斜も緩やかだ。


「ふぅ……、こっちは歩きやすくて助かる……」

「うん、道があるありがたみを思い知らされた気がするよ」

「確かに……」


 聞いてはいたが入山するのは初めてだったこともあり、体力的に疲れが見え始めていたアカリとミオ。よっこらせと、つい口にしてしまいそうだった登りが懐かしく感じられる。


 しかし残念ながら、子どもたちの共感を得るのは難しいだろう。好奇心旺盛な子どもたちにとっては、刺激が少ないと不評なのだ。ゆえに走り出す。


 母親たちを気遣ってゆっくりと進むマコトたちにしびれを切らし、一組、また一組と他の親子たちが先行し始める。別に一緒に行くと約束しているわけでもないので。


 そんな中、ご機嫌なのはスズカだ。


「~♪」


 刺激がないというのは、つまり危険が少ないということでもある。

 いざという時、手を付けないと危ない自然コースとは違い、手を繋いで歩くことができる。


 だから当然、スズカはマコトと腕を組む。その表情はさぞ幸せそうだ。この時間が永遠に続けば良いとさえ思っていそうである。


「私も来年はみーくんと一緒に来ようかな……」

「何羨ましくなってんの……」

「えー、だってー」


 その後ろでは、娘の幸せオーラの煽りを受けたミオが呟き、その内容にアカリが呆れていた。


 そうして十五分ほど歩き、その道中で残り四つのうち二つのスタンプを押してもらうと、ハイキングコースの中間地点であるアスレチック広場が見えてくる。


 そこで八つ目のスタンプを押してもらうと、マコトはアスレチックに視線を向ける。


 ここでもやはりと言うか、本来の目的を忘れた子どもたちが遊んでおり、親たちが腰を下ろして束の間の休息を得ている。


「遊んでく?」

「ん~……、どっちでもいい!」

「すーも」


 スズカとシホに問うも、二人からはあいまいな答えが返って来る。

 シホも体を動かして遊ぶのは好きだが、どちらかと言えばインドア派である。スズカはマコトと一緒なら基本的に何でも良い。むしろ今は手を繋いでいられる時間が惜しい。


「お母さんたち、休憩する?」

「どうします?」

「私は大丈夫ですよ」

「うん、私もー」

「うん大丈夫。まーくん、ありがと」

「じゃあこのままキャンプ広場まで行こっか」

「ん!」

「うん!」


 マコトたち一行はアスレチック広場で遊ぶこともなく、再び下山を始める。


 道中、最後のスタンプを押してもらい、通常スタンプをコンプリート。残すは隠しポイント一つとなったところで、キャンプ広場に辿り着く。


 すると、ミオが屋根付きのベンチの近くにある謎の空間に気が付く。


「何あれ? ミステリーサークルがあるんだけど……」

「ホントだ」


 石や木の枝で描かれた絵を不思議そうに見る大人たちだったが――


「すーたちがつくった」

「シホもならべるのてつだったんだよぉ!」

「「……」」


 作った張本人たちが紹介するので、謎はすぐ解けてしまった。

 マコトたちが年少時の春の遠足で作り、幼稚園の授業で遊びに来るたびに手直し(保守)を続けたものである。


 アスレチックのような子どもたちの興味を引く遊具は無いが、このミステリーサークルを確認したいがため、元ばら組の子どもたちには妙に人気?の場所になっていたりする。


 そんな場所にも関わらず、しおりの地図にスタンプポイントとして載っていない。ゆえに隠しポイントだとマコトは思っていたのだが――


「リコ先生、どこよ……」


 広場を見渡すも、子どもたちが勝手に林の奥に入っていかないように監視している先生が見えるだけで、年中組の担任の最後の一人がどこにも見当たらない。


 スズカとシホもきょろきょろと探してくれているが、発見の報告はない。


 他の親子もここは隠しポイントではないと判断したのか、去って他の場所を探しに行ってしまっている。


 マコトも同様の考えが脳裏を過るが、そんなはずはないのだ。


 登りでハイキングコースを行った親子から、このキャンプ広場でリコ先生に会ったと。そして隠しポイントは順番に回らないといけないからと、頑張って登らされ、アイを見つけたが結局スタート地点まで戻されて。


 と、苦労話のついでの目撃情報を複数得ている。


(移動式……?)


 てっきり逃げるアイ先生のことだと思っていたのだが、ラスボスはリコ先生だったのかもしれない。


(いや……、そうと思わせて……)


 しかし先生たちは”いじわる”である。

 これだけ親子が移動する中で、気付かれずに別の場所に移動するのは不可能に近い。


「かくれんぼ?」

「そうっぽいね……」

「じゃあリコせんせいさがす?」

「うん。たぶんどこかに隠れてるから」


 キャンプ広場はアスレチック広場と違い、開けた空間は少ない。

 入口近くの屋根付きベンチの周りと野外キッチンスペースを除けば、至る所に木が生えていて見通しは良くない。隠れるにはうってつけの場所と言えるだろう。


 付いてきていた他の友人たちにもリコ先生が隠れている旨を伝えると、全員が探しに散っていく。


「すーちゃん、僕たちも探しに行く? それとも待ってる?」

「ん~、じゃあまつ♪」

「了解」


 マコトは内心で待つんかいとツッコみながら、広場の入り口近くのベンチに座るアカリたちの隣に腰を下ろす。


「二人は探しに行かなくていいの?」

「ん、ここでまーくんといちゃいちゃする」

「そっか」

「あと人集めもしたいから」


 かくれんぼは鬼が多ければ多いほど早く見つけられるものだ。立ち去っていく親子を引き留めるのがマコトの役割である。


「あ、ボスだ!」

「またいちゃいちゃしてるー!」

「ん、すーたちあいしあってる」

「ラブラブだー!」

「ん! ちょうラブラブ♪」


 おそらくスズカに冷やかしは効かない。少なくとも今は。


「ねぇ二人にも協力して欲しいんだけど……」

「いいよー」

「ボスのめーれーだし! ことわれない!」

「いや、命令ではないんだけど……、ここにリコ先生が隠れてるから、一緒に探して欲しいなって」

「らじゃー!」

「いってくる!」

「うん、ありがと」

「かんしゃ」


 そんな感じで、最初からマコト一行と一緒だった十名に加え、さらに十名ほど戦力が加わったところでリコは発見された。


「ボスぅーー! リコせんせーみつけたー!!」

「なんかくさのなかにねてたー!!」

「へんなふくきてるよー!」

「オレしってる! めいさいふくっていうんだよこれ!」


 あくまで幼稚園児の遊びなので簡単に見つかると思っていたが、マコトの予想に反して意外と時間がかかった。


 子どもたちに囲まれ、マコトの前に連れられてくるリコ。

 別に連れて来いとは一言も言っていないのだが、それが当たり前となってしまったがゆえに彼はボスと呼ばれるのだろう。


 皆が順番にリコにスタンプを押してもらい、最後にマコトの番が回って来る。するとリコはムスッとした表情を作った。


「……マコトくん、もうちょっと自分でも動いた方が良いと思うんだけど……」

「……迷彩服着て隠れてる先生もどうかと……」

「……先生はマジシャンだから……。いかに見てる人の目を騙せるかがポイント、って師匠の教えをね……」

「……先生はマジシャンじゃなくて先生だよ……。あと師匠は止めてください」


 こうしてマコトたちは最後のスタンプを押してもらい、難なくフルコンプリートを達成したのであった。






「リコ先生、身体冷えるから無理しない方が……」

「師匠……、心配してくれてありがとう……!」

「だから師匠はちょっと……」

読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マー君の二つ名がどんどん増えますな。次は先生達のお疲れ様会ですかね?
[良い点] 面白い [一言] このあと、「草の人」や「変な服着てた」って子供たちの周囲や親の周囲で話題になりそうだけどリコ先生のメンタル大丈夫かな
[良い点] 一瞬マジシャンってなんだっけと思いましたが、マコトが新聞紙ビリビリ破いたときの先生だったんですね。つい読み返して探しちゃいました。 1話だけでも面白いのに倍楽しめた気分です。 [一言] 更…
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