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【旧】転生先が現代日本人ってふざけんなっ! って思ったけどそれが普通だし案外充実してる  作者: せん
幼稚園年中

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#138 百瀬家の長女

遅くなりました。

 母上の実家を後にした僕たちは、ミオさんの実家へと車で移動していた。


「まーくんといっしょにおばあちゃんち♪」

「楽しそうだね?」

「ん♪」


 チャイルドシートが二つもあって乗り降りがし辛いという理由と本人の強い希望により、ミオさんが運転するワンボックスではなく母上が運転する軽に乗り込んでいるスズカ。


 ミオさん曰く、いつもは不貞腐れながらの帰省らしいけど、今回は僕も一緒ということで大層ご機嫌のようである。……いつもが心配になってくるね。


 そして僕はというと、スズカの祖父母に挨拶をするということで緊張して……はいない。


 確かにミオさんの実家に行くのは初めてではあるけれど、スズカの祖父母と会うのは初めてではないからね。


 ミオさんの母――ハルコおばあ様はミオさんの妊娠中、幼稚園バスのお迎えに来てもらったりと何かとお世話になったし、ミオさんの父――名前は修造(シュウゾウ)さん――も何度かこっちに遊びに来ていて、会った回数で言えば我が祖父母より多かったりする。


 そういったわけで特に気負うこともなく車に揺られていると、ものの数分で百瀬家へと到着する。


 白を基調としたお洒落な外観の二階建て一軒家。吉倉家ほどではないが、そこそこ大きなお宅だ。


 庭は立派な家庭菜園になっており、ぱっと見で確認できるのはミニトマト、ナス、ピーマン、オクラ……。どうやらスズカがあまり得意ではない野菜たちが育っているようだ。


「みんないらっしゃい」


 車から降りると、ハルコおばあ様とシュウゾウさんに迎えられる。


「ただいま~」

「ま~」

「お帰り。アカリちゃんたちもゆっくりしてってね」

「ありがとうございます」

「お邪魔します」

「あ、あとこれ家の母からです」

「あらどうも。後でお礼しなくっちゃね」

「おぉ~、フウカとキョウカも大きくなったなぁ~」

「ほぅら、おじいちゃんだよ~」

「おじいちゃんでちゅよ~」

「うぁだっ!」

「ぃあっ!」


 暑い中、わざわざ外に出て待ってくれていたということで挨拶も手短に、僕たちは広い玄関へと入っていく。


「まーくんこっち。おしえてあげる」

「え、うん……」


 靴を脱ぎ揃え終えると、さっそく家の中を案内してあげると僕の手を引くスズカ。


 しかし良いのだろうか。

 久しぶりに会う祖父母を放っておいて、その上スズカと僕だけで勝手に家の中を歩き回ったりするのは……


「終わったらリビングにおいでね~」

「ん! まーくんいく」

「……あいさー」


 僕の心配もよそにミオさんから探索許可が下りたので、張り切るスズカに手を引かれるがまま、まずは洗面所へと案内され手洗いうがい。そのあたりはしっかりしてるよね。


 そしてお風呂にトイレ、洋室客間、和室客間。階段を上ってベランダ、納戸、物置(思い出)部屋二部屋へと連れまわされる。


 祖父母の部屋とミオさんの()()()()の部屋に関しては「ここはかってにはいっちゃだめ」とのことでドアの前をスルー。


 家の中は外観と同様に白色でまとめられていて、清潔感と上品さがある造りだ。

 ミオさんが幼少期を過ごしたにしては真新しい気がするのは、もしかしたら最近リフォームでもしたのかもしれない。


 そうして一通りの探索を終えた僕たちは、スズカの先導でリビングへと戻る。


 そこでは母上たち女性陣が八代家からの手土産(マドレーヌ)を囲み談笑していたのだが、その輪の中に何やら見慣れぬ女性が一人。


 うなじが綺麗なショートカットヘアに年齢を感じさせない透明感のある肌。上品さと妖艶さを兼ね備えていて、男なら十人が十人足を止めて振り返らざるを得ない。


 うん、美人で大人の色気が半端ない。

 母上とミオさんで見慣れているはずなのに、ちょっとドキドキしてしまっている僕がいる。不覚。


 十中八九、あの人がミオさんのお姉さん――美弥(ミヤ)さんだろう。ミオさんと顔立ちが似てるし。


「あ、帰ってきた」


 僕たちに気付いたミオさんが、こっちこっちと手招きする。


「むぉ……、すーちゃんが男連れ込んでる……」


 ごく自然に、それが当たり前であると言わんばかりに寄り添い手を繋いでいるスズカと僕の姿を見て、マドレーヌをのどに詰まらせかけるミヤさん。


 何だろう。どことなく残念な感じが漂ってくるんだが……


「いや~、お姉ちゃん。妹にだけじゃなくて姪っ子にも負けっちゃったね~」

「やかましい! 妹のくせに生意気な! この口こうしてやる!」

「いはいよほへえはん~!」

「ママへんなかお」

「ふーはん、はすへへふへはいほ!?」


 にししと笑い姉をからかうミオさん。そして当然のように反撃を受けている。うん、良いね。美人姉妹がじゃれ合うのは目の保養になる。


 ちなみにミオさんにはお兄さん――名前は拓巳(タクミ)さん――もいるらしい。上からミヤさん、タクミさん、ミオさんの順だ。


「ほら、ほへえはん、まーくんひあひさふしはいほ。()()()()()とひへ」


 ミオさんが何を言っているか聞き取れないが、さすが姉妹といったところか。妹の言いたいことを正しく読み取ったミヤさんは、最後にミオさんのお尻をペシンと叩くと、姿勢を正して僕に視線を合わせる。


「おほん……、はじめまして。ミオの姉のミヤです。よろしくね、まーくん」

「……よろしくお願いします」


 先ほどとは打って変わり、凛とした大人の優しいお姉さん風を吹かせているミヤさん。またこれが様になってはいるのだが、さっきのを見たらね……


 しかしお世話になっているミオさんのお姉さんだ。失礼のないように僕はペコリと頭を下げる。


「…………」

「…………」


 そしてミヤさんの見定めるような蠱惑的な視線と、僕のいつも通りのやる気のない視線がぶつかり合う。傍から見れば見つめ合っているようにでも見えるだろうか。


「……何してるのこの二人?」


 そんな僕たちにミオさんが首をかしげる。

 いや、なんか先に視線を外した方が負けのような気がして。


「……にらめっこ?」

「……まーくんに勝てるの?」

「……無理でしょ」


 母上やスズカ、ミオさんらとよくにらめっこをするけど、僕は絶対王者だったりする。僕の表情筋を動かせたら大したもんよ。いや、別ににらめっこをしているつもりはないんだけど。


「むぅ、まーくん。すーとやる」


 いつまで経っても終わりそうにないにらめっこに、しびれを切らしたスズカは僕の頭を両手で掴んで強制的に視線を我が物に。そして「むふぅ」。


「――ふむ、子どもが欲しい。できれば男の子」


 僕を見つめて何を考えていたのかと思えば。


「お姉ちゃんはその前に旦那を見つけないと~」

「ホントよ。いつになったらうちの長女は……」

「いやー、どうにも良い男()いないのよねー」

「ミヤさん理想が高すぎるから」

「お姉ちゃん、男は育ててなんぼだよ」

「そうよ。そう教えたじゃない」


 姦しい。女が四人になるとさらに。


 その育てられたであろうミツヒサさんとシュウゾウさんはお互い思うところがあるのか、男同士肩身を寄せ合い双子たちと遊びながら静かに語り合っている。


 それにしてもミヤさん、結婚どころか彼氏もいないのか。


 百瀬家の長女と言うことは淑女の嗜みも習得してるだろうし、容姿に関しては抜群。モテるだろうに意外だ。高嶺の花過ぎて逆に手が出せないのか、はたまた何かしらの欠点があるのか……


「そうは言ってもねー。寄って来るのは気概のない男ばっかりだし。職場は女の子ばっかりだし」

「……ミヤさんってお仕事何してるの?」

「何だと思う? 当てられたらおもちゃ買ってあげる」


 妖艶なウインクを飛ばしてくるミヤさん。

 おもちゃはいらないけど、とりあえず考えてみよう。


 実家(ここ)に住んでるっぽいし、……まさかニートじゃないよね?

 おもちゃ買ってあげるとポンと言えるということは、それなりに稼いではいるのだろう。どこぞの社長さんだったり? ……独身で実家暮らしならそれくらいは訳ないか。


 皆目見当も付かない。何というか、ミヤさんって隠すの上手そう(ミステリアス)だから。


「……モデルさん?」

「おぉ、まーくんはこの年にして女性の口説き方を知ってるねー」


 口説いてはいない。変なことを言わないで欲しい。ほらスズカが……ってあれ? いつもなら頬を膨らませているはずなのに、僕の横でマドレーヌを美味しそうに頬張っているだけだ。

 

「じゃあニート?」

「「「ぷふっ……」」」

「……まーくんは私を苛めたいのかな? 好きな子を苛めちゃうタイプなの? ニートなんて言葉よく知ってるね?」


 吹き出す母上たち。そしてミヤさんは怒っているのか褒めているのか。今の僕は無垢な子どもだし仕方がないよね。だから母上にも人気な柔らかい自慢のほっぺをぐりぐりしないで。


「こう見えてミヤお姉さんは病院の院長さんなんだからね? 正確には美容クリニックのだけど。一番偉い人なんだよ?」


 ……普通にすごい人だった。大変失礼しました。


「……だからミヤ()()()()()()()なんだね?」

「アレかな? まーくんは女性の扱いが上手だね? お姉さん将来が心配になって来るよ」


 それほどでも。社会人で上手くやるにはお世辞スキルは必須なので。綺麗なのはお世辞じゃないけれども。おばさんと言わないくらいは造作もない。


「むぅ、ミヤおねえちゃんばっかりまーくんとずるい」

「じゃあすーちゃんも一緒にぐりぐり~。そしてゴロゴロ~」

「ふごっ……」

「~♪」

「あ~、もう二人とも可愛いなぁ~。私の子にならない?」

「すーはママのむすめ」

「……僕もお母さんの息子」


 なるほど。ミヤさんって単純に子どもが好きな人なんだね。スズカがミヤさんに嫉妬しないのは、ミヤさんが僕のことを異性ではなく、子どもとしか見ていないからなのかもしれない。


 五歳児でそんな判断がつくのかは疑問だけど、女の子ってそういうの覚えるの早いらしいし。


「ねぇアカリ、私たち独身同士だしもう結婚……はむりだけど一緒にならない? そしたらまーくん私の息子。そんでもってまーくんはすーちゃんと結婚するからすーちゃんも私の娘。アカリともイチャイチャ出来るし万事解決じゃない!」

「え、遠慮しときます……」

「えー、いいじゃん! 大丈夫。女同士も楽しいと思うよ?」


 もしかしてミヤさん、女の人が好きな人……?

読んでいただきありがとうございます。


この物語はどこに向かうんだろう…

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませていただいてます。 [一言] お姉さんの名前を見た瞬間、思いっきり吹き出したのは内緒です。
[一言] 変な百合方向に行かない事だけは祈っておきます(苦笑
[一言] 百合要素出てきた……? それともおねショタ……おばショタ?もありなのか……?
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