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59 ショー開演

 ついに始まった『正義の権化インカネーションヒーローショー』。

 昔よくあった屋上のヒーローショーと同じで、ステージとも呼べないショボイ台の上でやるのかと思ったら、ぜんぜん違った。


 まず、ステージはかなり大規模。

 特撮ヒーローものの戦闘場所によくある、工事現場を模したセットまで組まれていた。


 そして、集まった観客も数十人ところじゃない。

 数百人、いや、千人はゆうに超えているであろう、屋上に入りきれないくらい大勢の子供やオバサンたちでひしめきあっていた。


 これだけの人がいて、後ろのほうはステージが見えるのか? と思ったが、そのへんも至れり尽くせり。

 なんとステージの上には巨大なスクリーンがあって、ステージ上をデカデカと映し出していたんだ。


 俺が想像する『屋上のヒーローショー』とは、なにもかも大違い。


 それらを舞台袖から見ていた俺は、今更ながらにちょっと気後れする。

 ユズリハも緊張しているようで、手のひらに『人』という字を書いて何度も飲み込んでいた。


 キャルルはそんな感情とは無縁のようで、「うわぁ、なにこのへんなステージ! それに人でいっぱい! みんなヒマすぎっしょ! あっはっはっはっ!」と笑顔を絶やさない。


 いきなり、俺たちのそばにあった巨大なスピーカーから『正義の権化インカネーション』の主題歌が流れ出して、俺たち3人は揃って飛び上がってしまった。

 ステージに進行役のお姉さんが出ていくと、観客からワッと拍手が起こる。



「はあい、みなさん、今日は『正義の権化インカネーションヒーローショー』に来てくれて、ありがとう! 小さなキッズも、美しいレディも、今日はいっぱい楽しんでいってね!」



 『美しいレディ』というのは、ようはファンのオバサンのことで、劇中のインカネーションの口癖が定着したものだ。


 しかしこうしてショーを見ていると、子供の頃に戻ったような気分だな。

 すっかり観覧者気分でいると、進行役のお姉さんは観客の相手を途中で止め、なぜか俺のほうをじっと見つめてきた。


 その口が、「はやく来て!」と動いていて、俺はハッとなる。

 そういえば、いきなり俺の出番だったんだ。


 台本によると、進行役のお姉さんの挨拶を遮ってステージに現れる『ドンキーブル』とある。

 俺はスタッフに押し出されるようにして、ステージに飛び出た。



「ま……まてえ! このショーは今から、この俺様が乗っ取ったモウ!」



 すると観客たちはさっそく、「ウワーッ!?」というさも嫌そうなリアクションとともに、俺にブーイングを送ってくる。


 俺とともにステージに出た戦闘員たちは、さっそく我が物顔でステージを荒らしまくっている。

 このあたりの演技は、さすがにプロのエキストラと思える憎たらしさだった。


 これから行なわれるショーの内容をざっと説明すると、このあとお姉さんと観客たちのコールで、主役である『インカネーション』が登場。

 手下たちと大立ち回りを繰り広げるのだが、ドンキーブルの卑怯な攻撃によって負けそうになってしまう。


 ピンチに陥ったインカネーションは、愛のパワーを補充するために『インカガール』を呼ぶ。


 俺はフリュンヌが手を出してくるまでは、台本のとおりに演技するつもりだったんだが……。

 ショーの序盤、インカガールたちがステージに現れるくだりで、事件は起こった。

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