42 密着就寝
風呂上がりの嫁たちは、美少女っぷりがさらにワンランクアップする。
普段でさえ天井張り付きの可愛さなのに、それを突き破るんだ。
ほっこりと上気した肌に、艶の増した卵肌。
ユズリハはそんなナリでちょこんと正座をしているので、なんだか新婚初……いや、なんでもない。
絶対的な安定感のある、正統派美少女のほうはいいんだ。
問題はもうひとりのギャルだ。
ネットとかでもよくあるじゃないか、お目々パッチリした美少女がメイクを落とすと、とんでもなく人相が悪くなるという、知りたくなかった現実を突きつけてくれる投稿が。
しかし、キャルルはその例に当てはまることはなかった。
アイシャドウやチークを落とした彼女は、また趣の違う美しさがある。
例えるなら、エビフライがエビ天になったような……って、わかりづらいか。
そんなどうでもいいことを考えてしまうほどに、俺は彼女たちにドキドキしていた。
なぜならば、風呂のあとは、いよいよあの瞬間がやって来るからだ。
そう、『寝る』……!
『人生ガチャ』の画面には、『布団ガチャ』が出てきていたので、さっそく引こうとしたら、寝袋を広げたキャルルが、
「なにこの袋みたいなの? ……えっ、寝袋!? これで寝るの!? あっはっはっはっはっ! 超ビンボくさっ! でもこれなら、超ラブラブで寝られるじゃん! それに袋で寝るって、超ウケるんですけど! あっはっはっはっはっ!」
どうやらギャルにはツボだったようで、結局、今夜は『布団ガチャ』は引かずに、寝袋で寝ることになった。
しかしこの寝袋、2人用。
3人で入ると、激安スーパーの詰め放題のナスビみたいにぎゅうぎゅうになる。
でもキャルルは、初めてキャンプに来た子供みたいに、ずっとはしゃいでいた。
「あっはっはっは! 超せまいんですけど! とりまダーリン、腕枕するし! ほらユズっちも、ダーリンの腕に寝て寝て!」
「ええっ!? 腕を枕に、ですか!? そんな、旦那様の大切なお身体を寝具にするだなんて、とても恐れ多いです……!」
「いーからいーから! ほら、もっとしがみついて! こうやって寝るのって、超ラブラブっしょ?」
「は、はい。旦那様に抱いていただいているみたいで、なんだか、わたくしには勿体ないくらいです……。あっ、す、すみません旦那様、わたくし、重いですよね? すぐに……」
ユズリハの身体は、小鳥が乗っているみたいに軽かった。
遠慮がちに俺の腕から降りようとしていたので、その細い肩を抱き寄せてやると、彼女はポッと頬を染める。
赤くなった顔を隠すかのように、俺の胸に顔を埋めていた。
そうやって、ふたりに腕枕をすると、俺は必然的に、磔にされたみたいに動けなくなる。
こんな幸せな磔刑など、世界じゅうのどこを探してもないだろう。
俺の胸には今、吐息を感じられるほどに密着した、美少女たちがいる。
俺の両脇には、彼女たちの豊かな弾力が、これでもかと押し当てられていた。
ユズリハは俺のシャツを、キュッといじらしく握りしめている。
黒髪から覗く耳は真っ赤で、白いうなじまでほんのりと恥じらいの色に染めていた。
キャルルは俺の腰に手を回すばかりか、脚まで絡めてきている。
むちむちの身体のラインがわかるほどに、完全密着。
頭は俺の肩に乗せていたのだが、その気配が不意に動いて、耳元まで近づいてきた。
そして……甘やかなささやきをたてる。
「ダーリン……ユズっち、ヤッちゃうし。でないとユズっち、ずっとダーリンにモジモジしたまんまだよ?」
それは、ずっと脳天気だった彼女からは、想像もつかないほどの、艶っぽい声音だった。
まるで耳をねぶられているような感覚と、内容のとんでもなさに、俺はゾクリとしてしまう。
しかし彼女はさらに、信じられない言葉を紡ぎ出した。
「もしかして、あーしのほうに、ムラムラしてる……? だったら、いいよ……あーしを先にヤッても……」




