37 新たな嫁
『ハーレムガチャ』を引いた途端、『人生ガチャ』の画面はガチャ演出に変わった。
ユズリハの時と同じ、誰かの人物の視点となる。
その人物はやっぱり女の子のようで、いま俺たちがいるような、夕暮れの街角を走っていた。
みずみずしい若い吐息が、はっはっ、とスマホから漏れ聞こえてくる。
タッタッという足音が響き、ゲームとも現実ともつかない、不思議な立体音響となって俺を包んでいた。
彼女の視線の先には、奇妙な男女ふたりが立っている。
コンビニからの買い物帰りのような、部屋着にサンダル姿の男と、小柄な巫女服姿の少女。
……って、これって、もしかして……。
俺たちじゃねぇか!?
俺はスマホから顔をあげ、現実の足音のほうを見やる。
するとそこには、燃えるような夕陽をバックに、不死鳥のように舞い上がる、ギャルの姿が……!
「うええええええーーーーーーーいっ! ダーリン、お待たせぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」
次の瞬間、俺は彼女のフライングボディプレス……。
いや、彼女のボインプレスをマトモに顔面に食らっていた。
「うわっぷ!?」
極限まで柔らかくしたボクシンググローブで思いっきり殴られたような、ぼみゅんとした柔らかさに包み込まれる。
彼女はユズリハが初めて俺の家に来たのと同じ、どこかの学校の制服姿だったのだが、上からニットセーターのようなものを着ていた。
女の子が着ているというだけで、その生地の感触までもが極上になるのだと、俺はいまさらながらに思い知らされる。
俺は彼女がぶつかってきた衝撃は耐えうることができたものの、違う意味でブッ倒れそうになっていた。
ギャルは俺を幸せで絞め殺す勢いで、うぇーいと叫んだ。
「EFLRの嫁、『鳥頭キャルル』っしょ! とりま、よろしくぅ!」
彼女もまた、ユズリハと同じく最高レアリティの『嫁』らしい。
ファッションこそ量産型のギャルだったが、その容姿は0.0001%の希少性を名乗るに相応しい、1万年にひとりの超絶美少女であった。
身長はユズリハよりも高く、体型もむっちりとしている。
ダークブロンドに染めたロングヘアを、肩を覆うくらいにフワッとさせた髪型。
そして小麦色の健康的な肌を、派手なメイクで彩っている。
といっても厚化粧というわけではなく、カラーリングが南国の鳥みたいに鮮やか。
制服も着崩しているというのに、なぜか似合っていていた。
白いブラウスの前ボタンは外されていてたのだが、どうやらそれは止めたくても止められないらしい。
なぜならば彼女は、セーターの中に鏡餅を入れているのかと思わせるほどの、豊乳……!
おかげでセーターの柄はびろんと伸びていて、ブラウスのボタンも外しているものだから、谷間が丸出し。
下手をするとブラチラをするんじゃないかと、こっちが心配になるほどだった。
しかしそんなナリでも、痴女のような恥知らずな感じはあまりなく、彼女だからこそ許されるような、不思議なオーラがある。
キャバ嬢のような派手さとエロさの中に、純粋さとハツラツさを感じさせるのだ。




