34 一撃必殺
俺は、空手三段相当の正拳突きを、ナスオの顔面にブチ込んだ。
ネヅオの時と違い、手加減なしの全力のヤツを。
……ドゴシャァァァァァーーーーーーーーーーッ!!
人間の手というよりも、金棒か何かで全力で突いたような鈍い音がおこる。
俺はインパクトの瞬間を、ハッキリと見ていた。
ヤツの顔がど真ん中からひしゃげ、俺の拳が手首くらいまでめり込んでいく一部始終を。
そして感じていた。
鼻が生卵みたいに、くしゃっと砕ける触感を。
さらにその奥にある、骨や肉までもを突き抜けていき、衝撃がヤツの脳にまで達する感覚を。
……ズドォォォォォォォーーーーーーーーーーンッ!!
ナスオは、バズーカ砲を顔面にくらったみたいに吹っ飛んでいく。
まるで格闘漫画の誇張されたワンシーンのようであった。
「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーンッ!?!?」
断末魔のような悲鳴と、釣り上げられたカジキマグロが甲板に叩きつけられたみたいな衝音が、バックヤードの通路に響き渡る。
しまった。
ちょっとやり過ぎちまったかな。
顔を押えて悶絶するナスオを覗き込んでみると、血まみれだった。
肌の色が土気色に変わり、いよいよヤバいかなと思う。
しかしよく見ると、顔というよりも額を押えているようだった。
指の間からは、なんと……。
ふたつの小さな角が、チラ見えっ……!?
「ナスオ……!? お前もモンスターだったのかっ……!?」
「ギイッ!? ギイッ!? ギイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
指摘した途端、四つ足になって這い逃げようとするナスオ。
それは本来はゴキブリのように高速なのであろうが、身体も本来の姿であろう子供サイズになっていて、そのせいでダボダボになった服が邪魔をして、うまく逃げられていなかった。
俺はすかさず足を振り上げて、ヤツの背中を思いっきり踏み潰す。
……グシャッ!
「ギヒィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?」
ナスオはもうモンスターであることも隠そうともせず、俺の足の下でジタバタともがいている。
その醜い姿はさながら、仁王像に踏みつけられる『邪鬼』のようであった。
そう、コイツの正体は、『インプ』……!
『ゴブリン』の親戚ともいえる、モンスターだったんだ……!
ゴブリンは肌の色は緑だが、インプは薄茶色だ。
そしてゴブリンには角がないが、インプには角が生えている。
いずれにしても、思いも寄らぬ出来事であった。
まさかハスミだけでなく、コイツまでモンスターだったなんて……!
……ピロリン!
『ミッション達成!』
『パワーアップガチャチケット 1枚ゲット!』




