22 モンスターバスター出動
「さあっ、行くのです、『モンスターバスター』たちよ……! 我が社に巣食うモンスターたちを、一匹残らず駆逐するのですわっ!」
リンドウお嬢様は、まるでこれから冒険に旅立つ勇者を前にした女王様のように、俺とユズリハに檄を飛ばすと……。
次のスケジュールがあるということで、俺たちを残し、そそくさと支社をあとにする。
あれよあれよという間に、俺とユズリハは一流企業に就職が決定した。
しかし俺は、着の身着のままのサンダル姿、ユズリハにいたっては巫女装束だ。
どっからどう見てもサラリーマンには見えない。
まぁなんにしても、俺たちを買ってくれたのであれば、一生懸命やるまでだ。
ユズリハなんて俺が一方的に巻き込んだというのに、
「旦那様のあしたんとさんになれるだなんて、光栄です! いっしょうけんめいお尽くしさせていただきます!」
握り拳をぐっと固めて、さっそくやる気を見せてくれていた。
でも、『あしたんとさん』って……。
本当に意味、わかってるのかな……?
フロアで土下座していた社員たちは仕事に戻っていて、まるで俺たちを腫れ物のように避けていた。
まるで授業中に当てられるのを避ける落ちこぼれみたいに、コソコソしている。
そりゃそうだろうな。
なんたって、上から『なにをしてもいい』なんてお墨付きを貰ったような存在が、同じ空間にいるんだ。
モンスターだと難癖を付けられたら、なにをされるかわかったもんじゃない。
俺とやりあったネヅオも、気がついたらどこかに行ってしまっている。
……しかし、これからどうすりゃいいんだ?
社内にいるモンスターを探せと言われても、俺はモンスター識別能力を持ち合わせているわけじゃない。
昨日殴った工場長も、別にゴブリンだと見抜いたわけじゃなくて、偶然そうだったというだけだ。
なにをしてもいいんだったら、片っ端からひっぱたいていくか……?
なんて物騒なことを考えていたら、
……ピロリン!
スマホから通知が届いた。
見て見ると、そこには……。
『ミッション発生!』
まるで狙いすましたようなタイミングだった。
今度は誰を殴れってんだ? と思ったら違った。
『ミッション:経理部の咲夜ハスミの胸をわし掴みにしろ!』
ミッション説明画面には、対象の人物の画像が表示されている。
「こいつは……!?」
ネヅオに続き、またしても忘れない人物の登場だった。
咲夜ハスミ……。
高校の時、同じクラスにいたヤツだ。
高校生でありながら人妻のような色気を醸し出す、とんでもなく色っぽい女子生徒。
軽くウェーブのかかった紫色のロングヘアに、切れ長の瞳の下には泣きボクロ。
学校の制服では胸のサイズが合わずにパツンパツンで、いつもヘソ出し。
そんなナリをしていたから、言うまでもなく全校男子のオカズだった。
それどころか、理事長か校長から教頭から、男性教諭全員と寝たなんていう噂がささやかれるほど。
なぜならば、校則にうるさい体育教師が、彼女にだけはノータッチだったからだ。
そんな、魔性の女が……。
この会社に、勤めてるだなんて……!
いや、彼女も『集団疎開』したんだから、不思議でもないか。
俺はさっそくユズリハを引きつれ、ハスミを探すことにした。




