19 過去との再会
次の行先は、工場から少し離れた所にある『権化堂カンパニー』の系列会社、『権化堂マート支社』だった。
『権化堂マート』は、世界で5万店を展開する、世界最大のスーパーマーケットチェーンである。
その『権化堂マート』の売上管理や新製品開発を行なっているのが、この『権化堂マート支社』というわけだ。
リンドウが来訪することは連絡済だったのか、到着した支社ビルは大変なことになっていた。
入り口では、全社員かと思われるほどの大勢の人がアーチを作っていて、大合奏と紙吹雪をまき散らしている。
俺たちがそのアーチをくぐるのに合わせて、社員たちはマスゲームのように跪く。
まるで王様か、北の独裁者が来たみたいな熱烈歓迎っぷりだった。
この一瞬のためにわざわざ敷かれたのであろうレッドカーペットを通って案内されたのは……。
『権化堂マート支社』の総務部のあるフロアだった。
全社員が椅子から降りて、地べたに土下座する中で、お嬢様は俺に言った。
「あなたの住所からいちばん近い支社を選びましたわ。今日からさっそくここで『モンスターバスティング課』として働くのです」
「ああ、わかった。で、具体的には何をすればいいんだ?」
「簡単ですわ、モンスターに化けた社員を見つけるのです」
「見つけてどうするんだ? 警察に突き出せばいいのか?」
「突き出すかどうかはお好きになさい。先ほどお渡しした社員証は、世界で通用するハンターライセンスにもなっておりますの。ですので見つけたモンスターをこのビルから投げ落としたところで、お咎めは一切ありませんわ」
すげぇ……!
お嬢様は社員証に、ハンターライセンスもくっつけてくれたのか……!
「そして所属としては、あなたは総務部ということにしてありますわ。なにか困ったことあったら、この支社の総務部長に言うといいでしょう。……総務部長、こちらに来るのですわ!」
お嬢様が土下座している社員たちに呼びかけると、「はは~っ!」と立ち上がったひとりの男が、腰を屈めた低姿勢でやってきた。
その男は最初は慇懃な感じだったが、俺の顔を見るなり態度が急変する。
「なんだ、お前かぁ……!」
もちろん俺も、相手のことは覚えていた。
忘れるはずもない。
高校時代の同級生にして……。
かつて俺をさんざんいじめてくれた、クソ坊ちゃんだ……!
コイツの名は、苔川ネヅオ。
医者の息子なのだが、噂では名門高校の裏口入学を断られたらしく、俺と同じ底辺私立に入学。
ようは、裏口でもお断りされるほどの、究極のバカ坊ちゃん。
そしてワルに憧れているのか、高校ではヒョロガリのクセして、いっちょ前にアウトローを気取っていた。
しかし腕っ節の実力が伴わないとわかるや、金の力を駆使し、クラスをシメていたDQNの腰巾着になったんだ。
そんなヤツも、例の『集団疎開』で『権化堂カンパニー』に就職していたのだが……。
まさか、こんな所で……しかも、こんな形で……。
再会するとは、思いも寄らなかった……!
いよいよ次回、ガチャで手に入れた技能が炸裂します!
最初の相手は、もちろん…!




