11 風呂上がりのJK
ちなみに俺は風呂はあまり好きではない。なぜならば面倒くさいからだ。
冬場は1週間に一度、夏場は3日に一度シャワーを浴びるくらい。
湯を張って風呂に入るなんて重労働は、年末の大掃除くらいのやる気を必要とする。
その大掃除も、一度もやったことないけど。
でもまぁ、せっかく準備をしてくれたのなら、断ることもないだろう。
女子高生の沸かしてくれた風呂に入れるなんて、そうそうないチャンスだ。
「じゃあ入らせてもらおうかな。でもガスコンロも使えなかったクセして、よく風呂なんて沸かせたな」
「はい。お台所のガスコンロさんと同じような仕組みでしたので、なんとか沸かすことができました」
どうやらユズリハは応用が効く子らしい。
昔ながらのタイル張りの浴槽には、見るからにちょうど良さそうな湯加減のお湯が、ぽかぽかと湯気をたてている。
ばしゃんと浸かると、「はぁぁ……!」と思わず声が漏れてしまった。
風呂ってこんなに良いものだったのかと、認識を改めさせられるほどに気持ちいい。
いつもはシャワーでもカラスの行水だが、今日ばかりは鼻歌なんかを奏でながら、ゆっくりと浸かって楽しんだ。
浴室から出た俺は、風呂の気持ち良さに忘れていた。
いま、自分の家には、JKがいるのだという事実を。
しかも浴室を出たすぐのところに、いた。
「きゃあっ!?」
まるで曲がり角の出会い頭でぶつかってしまったかのように、ぺたんと後ろに倒れ込んでしまうユズリハ。
その格好に、俺は我が目を疑う。
なんと、バスタオル一枚っ……!?
彼女はそんなあられもない姿で、膝を立てたポーズで尻もちをついていたので……。
太もものバスタオルが極限までめくれあがり、大変なことに……!
あと一歩間違えば、秘密の花園がグランドオープンしてしまうところであった。
「すすすっ、すみませんっ!」
次の瞬間、ユズリハは疾風のような勢いで土下座する。
俺は、彼女の奇行の連続に、理解がおいつかないでいた。
あ、もしかして、風呂に入るのが待ちきれなかったのかな?
ユズリハは見るからにキレイ好きそうだから、たぶんそうだろう。
俺は、もらわれてきたチワワみたいに、蹲って震えている彼女に声をかける。
「俺が長風呂だったから待ちきれなかったんだろう? もう出たから入るといい」
すると彼女は五体投地をしたまま、「は、はひ……」と震える声を絞り出していた。
しばらくして、ユズリハが風呂から出てくる。
「ありがとうございます。とってもよいお湯でした」
湯に浸かったおかげで気持ちもリセットされたようで、いつもの明るさを取り戻している。
しかしビジュアルのほうは入浴前より、さらにパワーアップしていた。
濡れ羽根のような髪、剥きたてのような卵肌。
ほっこりとした湯気と、幼い色気を無自覚にふりまいている。
風呂あがりだというのにスクール水着というのが、また始末におえないほどにエロい。
俺は彼女がいる日常に、ようやく馴染みかけていたというのに、またドギマギしてしまった。
その胸の高鳴りで、重大なことを思い出す。
……あれ?
飯食って風呂入って……そのあとに、することといえば……。




