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5-3

 話が終わり、部活があるからと玉滝は先に出ていった。


「一馬、先月頃にかえでさんが怪我や病気にかかったことは? それも冷たいもの関係で」

「それはもう、ひとつしか思い浮かばない。雪山で遭難したことだ」

 家族で行ったスキー旅行で、吹雪の中かえでが遭難した。物を凍らせる“ファントムペイン”ならば、原因はそれ以外に考えつかない。

「多分、“発症”した時の不安な心が正義に走らせたんだろうね」

「玉滝さんの話に出てきた女の人、誘われたって言ってたよな。その人に話を聞けば何かわかるんじゃないか?」

「あの日に金畑ゴールデンホテルにいた“発症者”はみんなもれなく錯乱状態にあるそうだよ。元々いろんな意味でヤバそうな“発症者”が集められたみたいで、話ができるまで回復するのにまだ時間がかかるって」

「うーん。じゃあ怪しさバツグンの黒ローブを探すしかないのか」


 外から野球部の張り上げた声が聞こえてくる。窓から差す西日が放課後の教室をオレンジ色に染めあげた。

 そろそろ帰ろうと空き教室から出ようとする。

手をかける直前、扉が開いた。


「まだ残っていたのか。こんなところで何をやっている?」

 一馬の担任、烏丸だった。


「ちょっと話をしてただけですよ。もう帰ります」

「そうか。逢い引きもほどほどにしておけよ、衛藤」


 黒いサングラスの奥がきらりと光る。

 へえ、と返事を返し、烏丸の脇を通ってありさとともに教室を出る。

 どうにも、最近一馬はこの先生を見ると調子が狂う。サングラスが怖いのかもしれない。


「おい、衛藤」

 呼び止められた。


「お前、夜に外出して遊んでないだろうな?」


 心臓が止まる思いだった。


 何故そんなことを聞くのか、真意を測りかねる。

「そんなわけ……ないじゃないですか。夜は家で宿題やってますよ。まだ宿題忘れ、ないでしょ?」

 そう返すだけで精一杯。


 サングラス越しの目は一馬を居抜き、全てを見透かしているかのよう。

「なら、いいんだ。最近危ない人物が多いようでな。昨夜にも喧嘩があったらしい。お前たちも巻き込まれないよう、暗くなったら外に出ないことだ」

 そう言うときびすを返し、去っていった。


 その背中を見送り、完全に見えなくなってから大きく息を吐いた。


「ふう、危なかった。どうもあの先生は苦手だな。ありさ、帰ろうぜ」

「ねえ、一馬。あの先生って前からこの学校にいたの?」

「いや、今年になって赴任してきたんだ。前は別の学校にいたんだって」

「そう……」

 ありさはずっと烏丸が消えた方向を見ている。

「どうかしたか?」

「……何でもない。さ、帰ろっか」


 視線をはずすと、さっさと歩きだしてしまう。一馬はその後を追いかけた。



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