失敗
「それと発明の天才とも聞いたな。自作のアイテムで、清っペの仕事を激減させたって聞いたぞ」
「ちょっと、変な言い方しないでよね。縁君、改めてありがとう。空いた時間のおかげで別の仕事ができて助かってるわ」
結局仕事はあるんだな。宗吾兄さんも若干引いてる。
そのうちこの人過労で、死んでしまいそうで怖いな。
「親父がここに連れてきたってことは、初仕事か?」
「そうだ。せいぜい天才の手並みとやらを、見せてもらおうじゃないか」
「へへっ、それもそうだな。応援してるぜ期待の星」
「頑張ってね」
何だ皆?妙にプレッシャーをかけてくるじゃないか。そういえば宗吾兄さんって何歳上の兄さんなんだろう?
何度か任務をこなして世界を救ってるみたいだけど、僕みたいな考えには至らなかったんだろうか?新世代だから放浪者の弱点は、無いだろうに・・・・・・普通に脳筋なだけか。
「むっ?なにか失礼なこと考えられた気がするぞ」
違う。動物並みに野生の勘が効くから考える必要がないだけだ。・・・・・・ん?それってやっぱり脳筋なんじゃ・・・・・・まあ良いか。
「ところでこの鏡にはなんの意味が?」
クイッと、顎で部屋中に鏡を示してみせる
「さっきも言った通りお前に体が吹っ飛ばないためだ。この鏡は異世界に設置してあるマーカーとつながっている。言うなれば、その鏡一つ一つが異世界へとつながる扉だ。自力で世界渡りをするということは、一から扉を作っていくこと同じことだ。未熟なものだと、扉が小さかったり、いくつもの扉を開いてしまって体がバラバラにされてしまうってことだ。だがしかし、この鏡を使えば、扉を開くという行程は省略できる」
なるほど、そんな意味があったのか。
「それとこれに着替えろ。あとこれも持ってけ」
そう言って父さんは中世風の甲冑と、数枚の銀貨と銅貨の入った袋を渡してきた。どこのお金?
「お前、あっちでの生活どうするつもりだったんだ・・・・・・」
完全に失念してた。父さんたちが大丈夫かコイツ?みたいな視線を送ってくる。
「あ、ありがとう父さん。行ってきます」
「おう、行ってこい」
「行ってらっしゃい」
「縁、呪文は覚えているな?」
「もちろん。ディメンションムーブ」
こうして僕は意気揚々と旅立ち・・・・・・失敗した。
その日、世界が一つ消えた。
白街「無事帰還しました。楽しかったけど疲れて昨日は、寝てしまいました」
縁「楽しかったか?」
白街「うん。・・・・・・浅草寺で、おみくじを引いてさあ自由行動だ!って周りを見渡したら、皆もういなかったこと以外は・・・・・・」
縁「お、おう・・・・・・(誰も声をかけてくれなかったのか)」
 




