世界渡り
は?違う種族?・・・周りを見ると廻理花達も驚いていた。最近入ったと言っていたからな。聞いていなかったんだろう。
「その話は、私達も聞いてなかったんだけど」
「この話は長くなるからな。バラバラに話したら面倒だ。」
すました顔で父さんはそう言って次はお菓子を出した。
さっきから自然にやってるけどやっぱりアレも魔法なんだろうな。一体どうやるのやら・・・さっぱり分からない。
「いやこれマジで長話になるから。まぁゆったりとして聞いてくれ」
そう言って父さんは話し始めた。
「昔昔、この地球に生物が誕生した頃私達は生まれた。原初の時代の私達は進化と成長の過程を飛ばしてこの肉体で生まれた事には疑問を持たないくらい知能が低かった。が、少しづつ知能を持っていきやがて自我が芽生えた。少しづつと言ったが今思えばあの学習速度は異常だった。それこそ神のみわざとしか言いようがなかったな。
知能を持った私達は自分達が他の生物と異なっていることに気がついた。他の生物は時が経つと成長していき、老いて、死んでゆく、がしかし自分達の肉体は生まれてから全くと言っていいほど変化が無かった。私はまだ居なかったが他の同胞達には子供ができていたが彼等もまた、ある程度成長したらそこで肉体の成長が止まったんだ。
つまり私達は不老不死という訳だ。
ちなみに私は原初の時代に生まれた者達の一人だ。・・・だいたいここまでの話で500年ほどが経っていたな。」
・・・何て言うか、僕達の種族の歴史って深すぎないか。いや、まず別の種族の時点で僕の脳のキャパがオーバーしてるんだけど。
・・・・・・・ん?てことは、
「父さん、今何歳だ?」
「・・・・・・数えてると思うか?」
マジかよ。生物誕生の頃から生きてるんなら何歳だ?30億歳は超えてるな。
正直怪しいとは思ってた。だって戸籍上だと今年で53歳なのに20代前半で通りそうな見た目だし、僕も最近「いやいやいや、若作りってレベルちゃうやん」って心の中でエセ関西弁でツッコんでたから。
まあその戸籍上の年もサバ読んでたんだけどね。
てか気づけよ僕。
「そういえば、父さんと母さんっていつ頃出会ったんだ?」
「それは猿人出現の頃だな。順を追って説明するからもう少し待て」
猿人出現の頃だなって割と最近(?)だな。もしかして僕たちが知らないだけで兄や姉がいたりするのか?いやいるな多分。仮に10年に一人産んだとしても軽く1000人超えてるし。
「さて、ここからが本題だ。私地にとって最も重要な事だから心して聞け。
不老不死に気づいて800万年、他の者達が楽しそうに生活しているのをよそにして、私は他の生物の生活を観察して自分達と違う点は他にも無いかとずっと考えていた。そしてとうとう気がついた。
他の生物と私達の違いはまだ二つもあった。」
二つ?一つは魔法だとしてももう一つは一体何なんだ。そして800万年間もボッチだった父さんはその頃何を考えていたんだ。
いかんいかん、父さんの発見よりもその頃の父さんの交友関係の方が気になってきた。
そんな僕の葛藤に気づかずに父さんは続きを話し始めた
「一つはお前達も分かっているだろう。そう、魔法を使える力。そしてもう一つは・・・・『世界渡り』の力だ」
世界渡り?も、もしかして異世界に行けるとかそっち系の能力か?
「魔法に関してはすぐに気がついた。世界渡りは魔法の研究をしてる時に偶然発見してしまったんだが・・・実際に使ってみせた方が早いだろう。『ディメンションムーブ』」
父さんがそう言った直後、僕達の目の前に座っているはずの父さんの姿が揺らいで見えた。
違う。父さんと僕達の間の空間が揺らいでいるんだ。
「よし、百聞は一見にしかずだ。行こう、付いて来い」
「えっ?あ、ちょっと待ってよ皆」
父さんに続いて揺らぎに飛び込んだ鈴音達に続いて僕は意を決して飛び込んだ。