おい、何があった
しばらくして目を冷ました三人に、僕が倒れていた間に何があったのかみいたが皆、「知らない」の一点張りだった。三人の目が若干泳いでるけど知らないのなら仕方がない。めっちゃ気になるけどね。
その後、小屋に戻って食事をした。身体強化の残りの試練はどんなのがあるのか聞いたら最初で十分だからもうしなくてもいいと言われたと言われた。
三人の表情が少し怯えた感じに見えた。本当に僕が倒れてる間に何があったんだ?
試練の間食料を取りに何回か戻ってきていたが皆と戻ってきたからなんだか久しぶりに小屋を見たような気がする。
今回食べたのは水炊きだ。僕は鍋が好きだが中でも水炊きが一番好きだ。さっぱりとしていて素材の味がそのまま汁に染み出して旨味が豊富。次元家の冬は週一で水炊きが出てくる。主に僕のリクエストだ。
「試練が中止なら明日から何をするんだ?」
そう聞いた僕に輪名が答えてくれた。
「えっとね、明日からは幅広く魔法を使えるようにできるためにひたすら実践するのと、いろんな武器を使えるようにするための練習だね」
幅広い魔法?いろんな武器?一体何のために・・・
「今お兄ちゃんはただマナを集めて打ち出すだけでしょ?そもそも魔力の細かいコントロールさえできてないし・・・・・・明日からお兄ちゃんが練習するのはマナを効率よくかつ効果的に使うことで、例えば炎の檻を作ったり、氷の剣を作って戦ったりすることができるようにするための練習だよ」
なんだか面白そうだな。失われてた中二心がうずくぜ。
(フフフ、さすれば我の出番も近いということであろうな)
「ん?なんかいったか?」
「別に誰も何も言ってないよ?」
おかしいな今たしかに声が聞こえたんだけど・・・・・・
「まあいっか。・・・じゃあいろんな武器の練習は?」
「それは世界渡りをした先の世界での文明レベルに合わせて武器を変える必要があるからだよ。文明レベルが低い世界で重火器とか使ってたら明らかにおかしいし、逆に文明レベルが高い世界で槍とか使って無双してたら目立つからね。それに敵と戦うときに剣を使ってた人がいきなりやりを使い始めたら、不意をつくこともできるんだよ」
「よく知ってるなー。偉いぞ輪名」
僕が頭をなでながら褒めると、輪名は照れながらも微笑んだ。
我が妹ながらめっさかわええ。
ま、それはそれとしてだ。
「ところでその話はいつ、どこで、誰に聞いたんだ?」
そういった瞬間、今まで笑みを浮かべていた輪名はその顔のまま凍りついた。輪名の話の矛盾点は武器についての話だ。
世界渡りについて父さんから話を聞いたのはこの部屋に来る前、つまり輪名達はいろんな武器を使う練習をしていたとしてもそれが、なぜそうしないといけないのかと理由に『世界渡り』なんて単語が出るはずもない。
そもそもおバカな輪名に自力でそんなこと考えつけるはずもないしな。
「別に悪いなんて言ってるわけじゃない。僕はただ輪名にそのことを教えたのが誰なのかが気になるんだよ。さぁ、言ってみようか。何処のタヌキが教えてくれたのか」
こめかみに青筋を浮かべながら聞くと、輪名は涙目でガクブルし始めた。あれ?ちょっと怖かったかな?
「お、お兄ちゃん。だ、誰が言ったか聞いても怒らない?」
「あ、ああ。怒らないけど」
「絶対?絶対怒ったりマイナスの感情が爆発したりしない⁉お母さんに誓える⁉」
なんで母さんに誓わないといけない。そして鈴音さん達はなぜ身構えてる。
「・・・・・・誓うよ」
「よし」
何がよしなのかさっぱりわからないな。
「実はお父さんがあらかじめ言ったくれてたの。他の三人にはサプライズで世界渡りを教えたいから秘密だよって」
・・・・・・何やってんだあの人。
つまり輪名は全部知ってたんだな。
「・・・・・・怒った?」
「いや・・・・・・怒るを通り越して呆れた」
まったく、父さんは一体何がしたいんだ。三人は小声でセーフとか言ってるし、訳わからん。
「段取りとかの関係で、先に武器の練習からするね」
なんの段取りか教えてくれなかった。
今更だけどここでやった訓練って結構雑なやつ多いな。




