真打ちは遅れてやってくる
「え?お兄ちゃん?」
「おぉいおぉい、なんで疑問系なんだよぉ。もちろん俺は正真正銘お前のお兄ちゃんのぉ、次元縁だぜぇ?」
そう言って縁君は、こっちに歩いてきました。私達は縁君が一歩踏み出せば、一歩後ずさりします。
だって縁君の周りのマナが禍々しく赤黒くてバチバチと電気を纏ってるかのように変化してるから。絶対ヤバイやつです。ラスボス級です。
そもそもマナを変色させるなんて聞いたことありません。常識外れなものに、体が自然と拒否反応を示してるんです。
私達はこの『縁くんの姿をした何か』に警戒し始めました。
「あなたは誰?お兄ちゃんはそんなねちっこい変な喋り方はしないよ?そもそもお兄ちゃんの一人称は僕だよ、俺じゃない。本当のお兄ちゃんはどこに言ったの⁉」
「チッ、流石に騙されねえかぁ。馬鹿だ馬鹿だと思ってたが、さすがは妹なだけあるか。なぁ輪名?」
「えっ?流石だなんてぇ照れるなーもう」
「やっぱ馬鹿だな」
輪名ちゃんは置いといて確かに喋り方が少し、いえ、かなりおかしいです。いつもの縁君だったら短い言葉を早口で話しますが、この縁君はゆっくりネチネチと相手を馬鹿にしたような印象を受けます。
「気がついたご褒美に俺が誰か教えてやろう。俺は縁の人格の一つ、そう縁の能力は憤怒じゃねぇ。俺の新世代の能力は人格変化。出てくる人格によって強さが変わるのさぁ。ちなみに俺は縁の怒りの人格、純粋な力は一番強ぇ。ある意味憤怒だなぁ」
ご親切に能力の説明と補足まで。案外チョロいかもしれませんね。
「ちなみにもとの縁くんにもです術はありますか?」
「それを教える意味は無ぇ。だってお前らはこれからおれにぶち殺されるんだからなぁ」
そう言って縁君の体がぶれたと思ったらいつの間にか私達の真後ろに立っていました。
いつの間に背後を取られたのかわかりませんでした。恐るべきスピードです。これは本気で相手をしないといけません。
「ハッ、もう遅いぜ」
「そんな・・・いつの・・・・・・間・・・・・・に・・・後ろ・・・」
段々と意識が朦朧としてききて倒れてしまいました。二人も私と同じようにやられたのか場たりと倒れました。
このままじゃ殺られる。そう思ったときでした。
「そこまでだ縁。・・・三人ともよく頑張った。後は私に任せろ」
「司・・・・・・令」
私達はただ殴られただけです。戦闘とかしてません。・・・・・・もしか来てこの人、このセリフ言いたかっただけじゃないんでしょうか?
登場のタイミングが完璧すぎる気が・・・・・・
「さぁ来い。私が相手だ」
私が最後に見たのは縁君に対峙してかっこよく構えを取る司令の姿でした。
おかしいですね。司令は構えなんかしないはずでしたが。
やっぱりタイミングを狙って・・・・・・