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第一の試練

 翌日、僕は廻理花を追いかけていた。それも身体強化をした全力でだ。

 鬼ごっこの要領で動く訓練も兼ねているがそれが目的ではない。本当の目的は移動だ。


 廻理花は、昨日試練を受けさせるとか言ってたから、おそらくそれを行う場所へ移動しているんだろうけど今朝、開口一番。


「移動するわよ。付いてきて」


 だった。しかも返事をする間もなく身体強化を使って全力疾走する羽目になった。


 昨日のメモはさり気なく廻理花の部屋に落としてきたからバレていないだろうが、今僕の頭の中は父さんへの怒りが半分以上を占めている。この部屋を出たら思い切りしばき倒してやる。


 集中力強化パートはダイジェストだったから皆いまいち分かっていないのかもしれないけど、あの修行はかなり辛かったんだぞ。


 修行と言えば、ベタに滝に打たれているのを想像する。僕はテレビでそれを見て、何やってんの?と思っていたが先日のダイジェストの中で僕は知った。滝行大事。何かやってる間に無の境地みたいなのが開けた。あと宇宙飛行士が訓練でやってる、平衡感覚を養うためにするぱっと見、アトラクションみたいな訓練。あれもやらされた。


 正直なんの意味があったのかも分からないし、なんでそんな器具あんの?とツッコミたかったが、とにかくそんな訓練をしていたことを皆に伝えたい!


 それが、すべてダイジェストにされた上、簡単だと言われ続けた魔法が使えずにバカにされたことで心が傷ついた僕がここにいる。


 挙げ句にそれが全て父さんの筋書き通りだったなどと!などと、な、などと・・・・・・ぐすっ。


 実は昨日泣いた。女々しく泣いた。さながら世の中の、社会の、親の理不尽さに嘆く駆け落ち前夜の乙女のように。


 さて皆さん。これだけのことを聞いても、父さんを殴るのをやめろというのでしょうか?もしそれでもやめろと言ったそこのあなた!あなたは人の皮を被った鬼だ!


 ・・・・・・・・・ところで僕は誰に話しているんだ?




 僕のアホな脳内劇場も、終わりに差し掛かってきたところで目的の場所に付いた。

 朝から見ないと思っていた鈴音さんと輪名はすでにそこにいた。


 目の前には、とーーーーーーーーっても高い絶壁がある。さしずめここは断崖絶壁エリアといったところか。


 試練と言ったが、僕は何をすればいいのだろうか。

 いや、実は薄々感づいてはいるんだ。けど流石にそれをさせるのは鬼だと思う。


 これはフラグか?


「今から縁には放浪者特製アスレチックに挑戦してもらうわ。アスレチック一つ一つが試練になっていて、まず第一の試練。この崖を身体強化以外の魔法を使わずに登りなさい!」


 鬼がいた。何なん?放浪者はスパルタ教育が好きなんか?儂、この前まで一般人じゃったんじゃけえの?・・・いかんいかん、つい切れすぎて方言が出てしまった。ちなみに僕は広島県民だ。関係ないか。


 さて崖を見てみよう。うーん、首が痛くなるまで見上げても頂上が見えねぇ。この高さは身体強化を使っても登れるかどうか怪しいなってかこれ作ったのって絶対父さんだよな?


「じゃあ私達は上で待ってるから。頑張って死なないようにね。え・に・し」


 と若干不吉なことを笑って言って、三人はシュンッと消えた。あれが空間魔法か。便利そうだな。あれが使えたら学校に遅刻しないじゃん。


 ・・・さてと、登るか。実は前々からロッククライミングをやってみたいとは思ってたんだ。

 この高さは異常だけど。


 あ、命綱。ナチュラルに話題に出てこなかったけど、これって命綱なしなんでしょうか?最初はともかく一キロくらいから落ちたら、いくら身体強化を使っているからって安全かどうかわからないぞ?


 え?マジで命綱無い系ですか?これってスパルタ教育と言うよりいじめじゃないですか?パワハラじゃないですか?いや、ライフハラスメント?ライハラ?


 はぁ、現実逃避しても何もならんな。登るか。


 最初は身体強化を使わずに登ろう。僕の素の体力がどれくらい付いたのかも把握しておかないといけないし。頑張りますか。


 そして僕は、軽く準備体操をして崖を登り始めた。

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