父さんの手のひらの上
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回復魔法は割かし簡単に使えた。
使う感覚は属性魔法とほとんど変わらなかった。傷に無色マナを押し付ける感じだった。
驚くくらい早く顔の痛みも引いた。
before幼馴染と妹にこれでもかと殴られた結果、一般的に醜いと言われるオークも真っ青なくらいボコボコになって、団子のようなたんこぶで腫れ上がった顔。口元をよく見ると歯も何本か折れています。ここに先程習得したばかりの回復魔法をかけます。
after何ということでしょう。とても醜くこれじゃあ、お婿に行けないと思われた悲惨な顔が元通りの美少年のイケメン顔に早変わり。折れていた歯もしっかり生えてきて笑うとキランと光っています。
「良かったね縁君。元通りになって」
その出来は、女神の皮を被って意中の男を殴る事に参加した鬼が涙を流して見つめる程。
「縁君?」
・・・いかんいかん、元の顔に戻ったのが嬉しすぎておかしくなってた。
鈴音さんは女神だが鬼ではない!あれ?なにか違うような。
訓練三日目
「今日は身体強化をマスターしてもらうわよ。ま、今日中に使えればだけどね」
そう廻理花は、馬鹿にしたように言った。カッチーン。言ったな廻理花、近所のおばちゃん達から僕がなんと呼ばれてると思ってる?教えてやろう。『やったらできる縁君』だぞ!
「身体強化は今までの魔法とは違って、マナを魔力で纏めて放出するんじゃなくて、そのまま体に纏わせるって感じね。でもマナと魔力を長時間維持させるのってかなり疲れるんだよねー。近所のおばちゃん達に『集中力が無い縁君』って言われてる縁にできるかなー?」
やってやろうじゃんかよ!見てろよー、こんな魔法一発で成功させてやる。
一週間後
「身体強化!」
マナを身に纏った感覚は透明なパワードスーツを着たような感じだ。本物のパワードスーツは、着たことないけど。
だが身体強化で上昇する能力はそれだけでは無い。反射神経、五感、思考速度、どれも段違いに上がる。
そんな身体強化を僕は、一分間発動させるのが限界だった。自在に動けるのは持って数秒。一分間は、全く動かなかったときのタイムだ。
「まだまだねー縁、あんなに張り切ってたのに一分が限界とか、プフッ、笑いが止まらないわー」
何故だ?身体強化は簡単な魔法じゃなかったのか?輪名ですらぶっ通しで発動させてるのに僕がたった一分しか持たないなんて。
もう何日立ったかすらわからない。あの日から僕は身体強化を続けるためだけに、己の集中力を極限まで研ぎ澄ませていた。
そして今。
「身体強化!」
以前はパワードスーツを着ていたような感覚だったが今は全く違う。僕の中で新たな世界が開いていくようなとてつもない高揚感がある。
世界中の全てが自分よりも下にいる。そんな全能感が僕を支配していた。
しかし力に溺れてはいけない。身体強化は初級も初級、入門レベルの魔法だ。そんな魔法に長い時間をかけた僕はまだまだ未熟者だ。
「やっとできたの?意外と早・・・遅かったわね。今日はそのくらいで終わって明日からは、『身体強化試験』に挑戦してもらうから」
そう言って小屋に向かっていった廻理花のポケットから紙切れが落ちた。
何かのメモか?拾って見てみると。
『縁の修行メモ、身体強化編
縁は無駄にプライドが高いから、身体強化をマスターすると、狩矢る(狩矢みたいになる)可能性が高い。よって最上級魔法の身体強化を初級魔法だと偽って、できなかったら馬鹿にして縁のプライドをへし折れ!そうすれば本気を出して通常よりも早く習得するはずだ
縁の父』
ハァ、やられたな。全て父さんの手のひらの上だったって訳か。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのクソ親父が!