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キリャクの過去

 僕は現在でこそ魔獣討伐専門の将軍と知られていますが、昔は人間相手の戦争でも指揮をとっていたのです。

 これでも神智将という二つ名が付くぐらいは戦果を上げていて、あの頃は僕も若く、戦を楽しんでました。


 戦を終えて国へ凱旋したときの高揚感、すべての国民が僕をこぞって歓迎し讃えてくるのです。

 そうしている内に、地位も上がってゆき、遂には武官の頂点の大将軍とまでなりました。


 しかし僕はまだ理解し切っていなかったのです。

 戦に勝つということの重みを。


 ある戦の後、陥落させた都市を視察していたときです。

 僕に石を投げた者がいたのです。

 何者かと見ると、まだ幼い子供でした。

 その少年に続いて、多くの少年、少女たちが僕に石を投げ、指さしこう言うのです。


 母を殺したやつの親玉だ、父の、兄姉の敵だと。

 彼らの憎しみのこもった目を僕は忘れることができませんでした。

 僕は今まで自分がしてきたことを思い出し、考えてしまったのです。


 僕はこれまで何人このような子供を生み出してきたのだろうかと。

 それから僕は戦場に出るたびにあの目を思い出してしまうようになりました。

 あの憎しみしかない目を。


 僕はそれが怖くなって以来、戦場に出るとまともな指揮ができなくなって魔獣討伐だけの将軍となりました。


 それでも罪の意識は消えず、少しでも罪滅ぼしができればと教会を建て、孤児の保護を始めました。

 あそこの子供たちはほとんど僕に家族を奪われた子たちなのですよ。


 もちろんマリエラもその一人です。

 彼女はそれを知りながらも僕の手助けがしたいと教会に残ってくれたのです。

 仇の僕を笑って許してくれました。


 これがどれほど嬉しかったか。

 少しだけ救われたような気がしたのです。

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