放浪者の力を身を持って思い知った ーーー女子を怒らせると恐ろしいーーー
翌日、早速時間魔法の練習が始まった。と言っても。
「はい使って」
「いきなり⁉どうやるかくらい説明しろよ」
「自分の行きたい時間をシューンと思い浮かべて魔力ドカッて込めるの、簡単でしょ?」
ハァ? 何言ってんだこいつ?あぁあれだ。天才の感覚派ってやつか。居るよな、とても才能はあるが説明するのは超下手なやつ。
まあいいさ。言う通りにやって廻理花に文句を言ってやる。
魔力をドカッが一番わからないな。とりあえず昨日使った時間魔法の感じで灰色のマナを使ってみるか?
結論から言うと成功した。
廻理花の説明が正しかったのか、僕も感覚派だったのかはわからないがとにかく成功した。
なぜ分かるのか。それは周りの景色がさっきまで居たはずの森林エリアではなく、海エリアの浜辺に立っていたからだ。
申し訳ありませんでした廻理花様。
「とりあえず成功したようね。私はおじさんに言われた時は半信半疑で集中できずに失敗したのに成功するなんて・・・・・・ちゃんと信じてくれて廻理花嬉しいぞ!キャピッ!」
すみません完全に疑ってました。後何で今ぶりっ子を出す?
「ところで、どの時間軸に移動したの?」
「ファイヤーボール(特大)を打ったことを思い浮かべてたから・・・・・・ん?」
あれ?僕ってどこにあの魔法を打ったけ?
そう思うと、遠くから何かが飛んでくる音が聞こえてきた。
「ねぇ・・・あれ・・・」
輪名が僕の後ろを青ざめた顔で指さした。
あーこの流れは予想がついた。
どれどれ?はたして後ろには太陽のような日の球が、ぼくたちに向かって飛んできた。
これは無理だわ。
その直後、僕の意識は途切れた
ーーーーfinーーーー
なーんて事にはならなかった。
僕達は元の森林エリアに戻って来ていた。多分三人の内の誰かが時間魔法を使ったのだろう。助かった。
いやー正直覚悟したよ。まぁ自分の魔法にやられるなんてマヌケにならなくて良かった。
ガツン!後頭部に衝撃が走った。廻理花に殴られた。痛い。
「あんた何考えてんのよ⁉鈴音がとっさに時間魔法を使って逃げなかったら私達今頃あんたの魔法で蒸発してたわよ!」
ガツン!ガツン!
「そうだよ!何であんな所思い浮かべながら時間魔法使うの⁉お兄ちゃんアタシ達に恨みでもあるの⁉」
そう言った輪名までガツン!と僕の後頭部を殴り始めた。
痛い痛い、ちょ、何で二人共僕の後頭部ばっかり殴るの?
こうなったら僕に甘い鈴音さんに助けを。
「ごめんなさい縁君。流石に今回は弁護できない」
鈴音さぁーーーん!!!
神に見捨てられた失意の中僕は二人に殴り殺された。
ーーーーーfinーーーーー
二回目はしつこいかな。
どれだけ僕が貧弱と言っても、女の子二人に殴り殺される程弱くは無い。
二人のそこまで本気で殴ってなかったしね。
しかし、今の僕の顔は見るも無残な状態になっている。
顔中に、いくつものたんこぶが出来上がっており、どこのギャグマンガだよと言うくらい顔が変形してしまっている。
これが体を鍛えた放浪者の力か・・・・・・殴った本人も引いてるくらい酷いからな。おいコラそこ!目をそらすな!お前らがこのおぞましい物を作り出したんだぞ!・・・・・・自分で言ってて虚しくなったよ。
「えーっと・・・・・・ついでだし、回復魔法も覚えちゃおうか」
ついでとは聞き捨てならねぇな鈴音さん。僕ぁ見たぜ?あんたも僕のリンチタイムに混ざって三回蹴ったのを。
・・・・・・やっぱり少し怒ってたんだね。