将軍の帰還
「うぐぐ…………だ、だったらコイツラでいいんだな」
「はぁ?」
「こいつらは、この国の民。ゆ、故に貴族に逆らえないんだな」
この豚は馬鹿なのか?何を言ってるんだ?
将軍が管理している施設の人間をさらってみろ。お家取り潰しの上に、三族処刑は固いぞ。
まさか、わざとか?いや、そんなことするメリットは無い。
だとすると……どこまで馬鹿なんだこの豚は。
「そもそも僕が黙って見てるとでも思ってるのか?」
僕にとって可愛い生徒たちを、しょうもない目的のために連れて行かせるわけが無いだろう。
「ブフォフォフォ。面白いことを、い、言うんだな。お前は先程二回奇跡を使ったんだな。もうこれ以上は疲れて使えないんだな」
いや笑い方。どうやったらそうなるんだよ。
それはそうと、魔法のことを奇跡って呼んでるのか。
干ばつのときに雨を降らすことだってできるんだから、まあ奇跡といえばそうか。
にしてもやっぱり愚か者だな。
「想像しろ。どうして僕がそのどうでもいいような兵士に二回も魔法を使ったかを」
ポンと掌の上に火球を作ると奴らの顔が青ざめた。
「想像しろ。子供たちに魔法を教えることができる僕がどれほどの修行をしたかを」
火球を大きくする。僕は一か百でしか魔力を扱えないので、火球はいつかの海エリア蒸発事件の再来となる大きさに膨れ上がる。
「想像しろ。これが当たれば醜く汚いお前たちがどうなるかを」
珍しく僕はガチギレだ。数万年生きたものの殺気は堪えるだろう。
「ヒブッ。助けてくれなんだな。もう、関わらないんだな」
顔面蒼白の豚が腰を抜かせて命乞いを始める。
……さて困ったぞ。もうこれ引っ込められない。
そもそもこんなの撃ったら子供たちもただじゃ済まない。
(縁もこいつに負けない馬鹿だな)
煩いよ。バルスは黙ってろ。
「そこまでです!双方引きなさい」
僕もパニックになり始めた時、その声は響いた。
声の主は軍服を煩わしそうに着て、目の下にくっきりしたくまを浮かべた三十代半ばの男だった。
あれはもしかして。
「キリャク先生!」
やっぱり!