豚貴族
自分たちの目的が僕にバレてることにうろたえる兵士たち。
うろたえながらも、怒りで顔を真っ赤にするなんて器用な芸当をしている。なんかコイツラ面白いぞ。
あ、やべ。子どもたちが引いてる。
アリアちゃん!ゴキブリを見るような目で僕を見ないでくれぇ!
一応助けたよね⁉
「お兄ちゃん、何か変だよ……」
「これが兄貴の本性か」
「エニシさん……」
教会の扉の影からこちらを覗いていたシスターマリエラが呆然とした表情でこっちを見ていた。
「オ、オホン。てゆう冗談はさておき、そろそろ帰ってくれませんかね?もうお昼時なので腹ペコなんですよ」
(無かったことにした!絶対に冗談じゃない)
兵士たち、子供たちとシスターの心の声がシンクロした。
もうヤダ。
「こ、こちらはまだ、用が、済んでないんだな」
フガフガとした喋り方で出てきたのは。
「……服を着た、豚?」
「違うんだな!み、皆のもの膝くんだな。貴族のブータ・ジェルミド・グライツ様なんだな」
ブータ…………豚じゃん!
四つん這いになったら本当に見分けがつかなくなる顔と体型だ。
僕以外のみんなは嫌々ながらも跪く。
豚は満足げに頷くが、僕を見て顔をしかめた。
「お、おい貴様。跪くんだな!」
「畜生に下げる頭はない」
「な、何なんだな!」
しまった、つい本音が……仕方ないか、相手豚だし。
「貴族に向かって生意気なんだな」
「うーん、言い方を変えようか。僕はこの国の人間じゃない。だからこの国の貴族様に媚びる必要はない。ましてやあんたに仕えるなんてありえない」
調べるとどうやらこいつの目的は、僕を他のボンボン共に見せて強い駒を手に入れたと、自慢したいだけなようだ。
どうせ連れて行くんなら軍事利用なり、魔法の指導なりさせればまだ見直せたんだけど……親の教育が成ってないな。