腕を切り落として煽る
僕が教会に来てから三ヶ月の間に、シスターを含め子供たちはかなり魔力の使い方が上手くなった。
魔道具有りの如月さんたちと戦ったら勝てるくらいかな。
ちゃんと、人に迷惑をかけないっていう約束を守ってくれていて、畑に雨を降らせたりとか、突然出てきた魔獣を追い払ったりとか大活躍で、町の人たちも孤児に対する見方を変えたようだった。
そして、キリャク将軍が帰ってくるらしい頃に事件が起きた。
「ーーッ!ーーッ!」
「あら?外が騒がしいですね。キリャク先生が帰ってきたんでしょうか」
「僕が見てきましょう。念の為マリエラさんは小さい子を奥に」
昼食を作っていた僕とマリエラさんの耳に外の言い争いのような声が聞こえてきたので、外へ確かめに行った。
「離して!離してよ!」
外では、鎧を身に着けた男たちが年長組のアリアちゃんの腕を掴んで無理やり連れて行こうとしていた。
他のみんなは何故か悔しそうに叫んでいるだけだ。なんで魔法を使わないんだ?……あ、約束してたっけ。
そういう意味じゃなかったんだけどな。仕方ないな。
「やあ君、デートの誘い方って知ってるかい?ウインドカッター」
「嗚呼ん?ギャー!俺の腕がー!」
とりあえずアリアちゃんの手を掴んでいる男の腕を、肘から切り落として解放した。
「兄貴ヤバイよ。そいつ貴族の私兵だって」
「貴族?何でそんな権力の塊みたいなのが来るんだ?」
「知らねえ」
「貴様らぁ!我らをグライツ男爵が子息、ジェルミド様の配下と知っての狼藉か!」
いえ、知らずの狼藉です。
確か男爵って貴族の中では下の方だっけ?しかもその子供の私兵とか、ここの将軍より立場低いでしょ。
「僕は汚い手で女の子を無理やり連れ去ろうとする、不審人物の手をほんの少し切っただけだよ」
「どう見ても切り落としてるだろ!貴族の兵に手を出した罪、その身で償わせてやる!」
うーわ、顔真っ赤で茹でだこみたい。今の魔法を見たら僕に近づけば、やられることくらいわかるだろうに。
あまり程度のよろしくない兵士さんのようだ。
「ヒール」
「痛え、痛えよ……あれ?痛くない。は⁉手が戻ってる」
後ろの方で、切られた腕を抑えてじたばたしてたやつを完全回復させてやった。
他の兵士たちは信じられないような顔でそいつの腕を見つめている。
そんな兵士たちに僕が言う。
「はて?腕を切り落とされた兵士なんてどこにもいませんねぇ?あーれぇっ?おっかしいな〜僕に言いがかり付けて連行しようって魂胆が失敗したねー!ねぇ、ちゃっかり目的も見破られてるってどんな気持ち?ねえ、教えて教えて?」