臨時で先生
地獄の食事を終えて、僕はまた子供たちに捕まって魔法を使わされていた。
「てーじーな。てーじーな」
「だから魔法だって……」
仕方なく火球を出してジャグリングのまねごとをしてみせる。
僕の周りではいろいろな色の蝶や小人がひらひらと飛んだり踊ったりしている。
このくらいなら僕もコントロールできるようになってきた。
「アニキアニキ」
「どうしたんだぃ?リュカ君」
「俺にもその手品教えてくれよ」
もう訂正させるの面倒になってきた。
「魔法とは魔力でマナを操る術、君たちは魔力が微量……少ししか無いけど無いわけじゃない。例えばこうする」
僕はリュカ少年の額に人差し指を当てて彼の魔力を操り魔法を強制的に使わせる。
リュカ少年の手からぽずっと小さな火の玉が出てすぐ消えた。
「おお!出た出た!兄貴、出たぞ!」
「感覚は覚えたね?次は自分の力で出して見るんだ」
そう言うと、リュカ少年はふぬぬぬぬ!と右手に力で集めようと気張る。
ほんの少しだけ魔力が右手に行ってるがそれじゃあ駄目だ。
「物理的な力で送るんじゃない。力を抜いて体の内側を巡る血を集めるように、さあ、まずは体の中心に、そう。そこから血管を通って右手へゆっくりと送る」
「……出た!」
おおー!と他の子供たちもリュカ少年を歓声を上げて見る。直後次は僕も私もと僕を囲んで魔法の使い方を教えるようにねだってくる。
「魔法を使いこなすには自然の理を知らないといけない。君たちはまずその勉強から始めよう」
まあ、そんなこと言っても中学校までの理科ができればいいんだけどね。
「じゃあお兄ちゃんが教えてよ。先生はしばらく帰ってこないから」
……将軍だから戦に行ってるのか。
しくったなー。思ったより長くここにいないといけないのか。
「マリエラさん、大丈夫でしょうか?」
「はい。先生は三ヶ月ほど戻ってこないので勉強を教えてもらえるなら助かりますが、エニシさんの方こそ、そんなに長い間ここにいても大丈夫なんですか?」
三ヶ月か。思ってたより長い、せいぜい一ヶ月かと思ってた。
「元よりあてのない放浪の身です。数カ月同じ所にいても変わりませんよ。何ならマリエラさんも習いますか?人の傷を癒やす魔法もありますよ」
「いいんですか?それでは私も」
こうして僕は彼らの臨時の先生をすることになった。
この子たちが数百年後、始祖の賢者と呼ばれるようになる事はまだ誰も知らない。