時間魔法は使いづらい
その日はそこまでにして夕食を、取ることにした。
驚いたことにこの部屋の空は時間によって色がちゃんと変わる。多少外と時間の差があるから今が夕方だが、多分外は八時くらいだろう。
エリア一つ一つに小屋があって、その地下にはバカみたいに大量の食料や衣服、日用品が置かれていた。
「これって腐らないのか?」
「修行部屋は時間魔法で外との時間の流れが違うけど、この倉庫には更に別の時間魔法がかけられていて中にある物は外に出すまで時間が止まってるのよ。試しにこのパンを食べてみて」
そう言って廻理花が僕にパンを投げてきた。食べ物を投げるな!
見たところ普通のパンだけど、あんぱんかな?ごまが乗ってるし。さてと、お味の程はと・・・・・・ガキッ、あんぱんを噛もうとした僕の歯が鉄を噛んだような音を立てた。
「固っ!何だこれ?」
「倉庫だと時間が経たないって言ったでしょう? 食べるなら外で食べないといけないの。 たまにそれを忘れて歯を折る人がいるから治癒魔法を使えないと泣くわよ」
「先に言ってくれよ。あー痛い」
「ごめんなさい。縁君だったら気づくかと思って黙ってたんだけど駄目だったね」
どんな買いかぶりだよ。鈴音さんは少し僕に期待しすぎだ。
また歯を痛めるのは嫌だったから、次はちゃんと外で食べた。パンは予想通りあんぱんだった。
「明日は、モグモグ、時間魔法を、モグモグ、覚えるからね、モグモグ」
廻理花さんや、口の物をなくしてから喋りなさい。
「縁君。一応言っておくけど、時間魔法は任務からの帰還の時と、この部屋みたいに何かに付与する時以外で使ったら駄目だよ」
「何でだ?」
「司令が言ってたらしいんだけど、タイムパラドックス?がどうたらこうたらで後処理が面倒なんだって。最初は狩矢さん達が暴走を始める前に行って何とかしようとしたらしかったんだけど駄目だったらしくて」
「駄目だったって一体どんなことしたんだ?」
「時間魔法を使って過去に行こうとしたら未来の司令がやって来て止められたそうよ。未来の司令の話だと、未来の司令が時間魔法を使おうとしたら狩矢さん達も使ってきて、両陣営が時間魔法を乱用し過ぎてこの世界が崩壊する結果になってしまったから時間魔法を使う前に戻って止められたってメモに書いてあるわ」
うわー、自分のやった事の後処理とか面倒すぎるだろ。世界が崩壊してあたふたする父さんと狩矢兄さんの姿が目に浮かぶ。あ、狩矢兄さんは見たことないから姿は浮かばないな。
仮に僕が百人の自分を呼んで狩矢兄さんを倒したとしても、その後百回も呼ばれると・・・・・・うん、拷問だな。僕なら十回目辺りでキレる。
未来と過去の関係が少しややこしいな。
さっきタイムパラドックスがなんたらとか言ってたな。・・・・・・だめだだめだ、これ以上考えてたら頭がパンクしてしまう。
僕には詳しいことはあまり分からない。