ダンジョンを作ろう
「へー、無の世界に秘密基地か。なんだかワクワクするな」
僕から話を聞いた兄さんは目をキラキラとさせ始めた。
「子供か……兄さんって何歳なの」
「370」
まさかの江戸時代生まれ。大人?なんだからもっと落ち着き持ってくれよ。
「百聞は一見に如かず。では行ってみよー!」
「おー!」
遠足のテンションだな。
◇◆◇
「おー。見事に何も無いな。土台だけだ」
周りにあるのはどこかの世界。真っ白な空間に広々とした土台だけがフヨフヨと浮いている。
「まだ何も置いてないからね。あ、そういえば指名手配犯はどうしたの?」
こっちを言いたすぎてすっかり忘れてた。
「面倒だったから全員一気に将暉に引き渡しといたぜ。あいつ一応警察署長だからな」
僕数十人捕まえろって言ったんだけど……将暉さん絶対困ってるでしょ。
ちなみに将暉さんは放浪者だ。
「で?ここには何を作るんだ?」
「ダンジョン」
「は?」
「ダンジョン」
「はぁ!?」
全員が理解不能のようだった。
皆がフリーズして戻るまで少し時間がかかった。
「なぜにダンジョン?」
「思ったんだけどさぁ、新世代が世界を意図的に破壊しようとする動きがある今、多分最終的に全世界規模での戦いが起こると思うんだぁ」
「はあ⁉聞いてねえぞ!いつ分かったんだ!」
「二週間前」
おっさんを暮人兄さんが、能力の強制で暴走させてたという事は世界がどうなろうと構わないということ。
すなわち、意図的に世界を壊そうとしている。
僕のラノベ知識を総動員させて考えると、春馬兄さんを乗っ取っている輩は、何かしらの方法で世界を作り直して神になろうとしていると予測する。
肝心な方法がわからないのが気がかりだが、放浪者の力があればそれくらいできそうな気がする。
春馬兄さん乗っ取られ云々は誤魔化しながら宗吾兄さんに説明した。
「突拍子もねえ話だなぁ。だがそれが当たってたとしてダンジョンにはなんの意味が?」
「転移者の育成と戦力の生産、そして1番の目的は……」
「目的は?」
「僕がダンジョン経営をしたいから」
ズコっと昭和のリアクションをする三人。いや、平成生まれは如月さんだけだったか。
「流石に何もないのはアレだから、最上階には豪華賞品を置いておくよ」
ダンジョンのシステムはどうしようかなぁ。
DP……うん、DP制にしよう。
「何を置くんだ?」
「それは手に入れてのお楽しみ。魔王はここのラスボスしてね」
「……予もトレーニングしなかったらヤバくね?放浪者も来るのだろう?」
「モチ。僕のダンジョンにふさわしい強さになってね」
おっさんは頬を引きつらせながら突っ立っていた。
目の端に光るものがあった気がするが気にしない。