舎弟の帰還
「無の世界には土台だけ置いてやった。どうするかはお前次第だ」
「領地経営ゲーム?」
「……まあそんなもんだ。放浪者や新世代を何人か送るからよろしく。全員優秀な者たちだから安心しろ」
「了解。向こうは多少無茶しても大丈夫?」
「わざと壊そうとしない限りは大丈夫だ。あとこれをお前に」
父さんが差し出してきたのは何かの資料。
目を通せと言われたのでパラパラとめくる。
「げっ、次の任務じゃないか。どれどれ……無敗の将軍が希望の世界か」
「今のお前なら学ぶものも多いだろう。上手く世界の意志とやらを手に入れれば儲けものだしな」
今の僕にピッタリの能力だ。さすが父さん。息子のことがよく分かってる。
「あ、因みに部隊名は転移者でいいか?」
今言うかそれ。
◆◇◆
遠くからバイクのエンジン音が聞こえてくる。
「帰ってきたか」
「そうだな。しかし3日足らずか。思ってたより早かったな」
椅子に座りながら資料を眺める僕の独り言に、後ろに立っている魔王がのおっさん返事をした。
おっさんを生き返らせてファルナちゃんと感動の再会をプロデュースしようとした……んだけど
何故かファルナちゃんは感極まって僕に抱きついてきた。
おっさん不憫。
二人は今、僕の家に居候しているけど今おっさんの所属は転移者であり、アジトに住み込み状態なので、実質僕の家にはファルナちゃんだけが居候していることになる。
「そうかな?魔道具を渡してるんだから遅いくらいだと思うけど。どうせお小遣いでも使って遊んでたんだろ」
族共は若くて高2、一番年上で28(働けや)で全員無職。下手したらそのへんでカツアゲし始めそうだったので(実際していた)月三万円支給している。
高卒勢はアジトに住み着き始めたので家賃も必要ないし十分なはずだ。
「出迎えに行くか?」
「ここで待とうよ。面倒だし」
しばらく待つと部屋の扉が勢いよく開けられた。
「今帰ったぜヘッド!」
「……宗吾兄さんが何でいるんだよ!」
部屋に入ってきたのは舎弟代表の如月さんと宗吾兄さんだった。
普通に馴染んでるけど何その世紀末ファッション。ウチのチームそんな格好してないよ。
カオスで頭を抱えたくなった。
「いやぁ、散歩してたら面白そうなことしてたからつい、な?」
な?じゃねえよ。如月さんもなんで仲間に入れてんの?
僕の心の声が聞こえたのか如月さんが弁明した。
「わっ、私はヘッドのお兄さんだと聞いたので大丈夫かなーって」
僕が睨んだからかもじもじしながらそう答える。
この人チームの奴らの前だとオラオラなのに僕たちだけになると素が出てしまうらしく、ほぼ別人だ。
「あのう、ヘッド、仮面は?」
「身内しかいないのに?つける意味ないじゃん」
僕の素顔を知ってるのは元如月チームのみ。それ以外にはまだ顔は見せてない。
「そうですか。はぁ……」
なんで悲しそうなんだよ。少し付けてあげようかな?って思うじゃないか。
「……付いてきたのはまあいいさ。兄さんにも離しておこうと思ってたし」
「お?何だ面白いことか?」