悲しみと怒り
「今までの父さんの放浪者らしからぬ行動の何割があいつの命令なんだ?」
「世界を守るというのは我々の本能だ。それを命令と判断するのならば放浪者全員一生あの方の命令通りと言えるな」
適当にはぐらかされて僕はだんだんと苛立ってきた。
僕が聞きたいことはそんなことじゃないんだ。
「恨んだりしてないの?」
「はっはっは、何をいうかと思えばそんな事か。私にとってあの方は神だ。いや、実際神か。神に従うのはその世界に生きる者として当然の務めだろう」
「僕が聞いてることはそんなことじゃない!」
いまだにふざけている態度の父さんに僕の我慢も限界になった。
「何でそんなにヘラヘラできるんだよ!僕たちは生まれた時からあの女の操り人形だっんだぞ!どうしてそんなに平然と出来るんだよ!」
「し、しかしそれは他の者も……」
父さんがどもるのは始めてだった。
「他の奴らは自分たちの運命は知らない!父さんは最初から知ってたんだろう?何万年も何億年も……何で父さんだけが抱え込むんだよ!父さんが……辛いだけじゃないか!」
父さんは途方もない年月の間、放浪者はただ世界を安定させるためだけに存在してきたことを誰にも言わず黙ってた。
父さんには友達がいる。僕や輪名、宗吾兄さんだっている。なのに、なんで苦しいことを一人で抱え込むんだよ。
そんなに僕たちが信用できないのか。いいや、父さんが僕たちに自分たちの哀しい運命を知らせたくなかったんだろう。
「でも僕たちは自分たちの運命を知ったくらいで絶望したりなんかしない!むしろ運命上等!とか言う気概の奴等ばかりじゃないか。なのに、寂しすぎるだろ」
途中から僕は泣きながら父さんに怒っていた。
いつもの、のらりくらりとした態度はやめて父さんは僕を真剣に見つめていた。
課題試験が終わった。
白街は結果を知りたくない。