続いていく
「廻理花姉、アタシお兄ちゃんが怖い。いつか女の人に後ろから刺されるんじゃない?」
「あの子も今まで冗談で縁に迫ってたけど今では恋する乙女の顔、落ちたわね」
「鈴音姉のライバルは九歳か」
「私も頑張らないと」
「廻理花姉なにか言った?」
「ううん何も」
二人がなにか言ってたみたいだけど、魔法で音が遮断されていて何を言っているのかわからなかった。
「縁さん」
「うん?」
既に愛情から体の操作権は返されていた。
全く、好きなだけやって帰りやがって。
「もう少しこのままでも良いですか?」
「……ああ、君の気が済むまで」
ファルナちゃんは泣きつかれて寝てしまうまで僕を離さなかった。
いくらしっかりしててもやっぱり九歳なんだと改めて思った。
おっさんを復活させたら身分とかしがらみのない普通の親子として暮らしてもらいたいものだ。
「ただいま、縁君」
「おかえり鈴音さん」
ファルナちゃんをベットに運んで寝かせた後すぐに鈴音さんが帰ってきた。
「これで君たちとはお別れだね」
「カインさん。短い間でしたが、ほんっとうにお世話をかけました」
やかましい二人がずっと家にいたんだ。さぞストレスが溜まっただろう。
「いやいや、天才と言うものを見ることができて満足だよ。まさか君みたいな若者が放浪者の在り方を変えることになるなんて……時代は移りゆくってことなのかな」
カインさんは遠い目をして若かりし頃の自分を思ってるようだった。
「そんな目をするのはまだ早いですよ。カインさんにはまだこの世界を守ってもらわないと」
今回の事で、春馬兄さんに取り憑いてるゴミは世界を滅ぼすことにためらいはないことがわかった。
今まではこちら側は余計なことをして世界が崩壊することを恐れて崩壊を遅らせることをメインにしていたが、魔力炉とクローン体のおかげでこれから攻勢に打って出るだろう。
だが、ゴミがそれを黙ってみているとは思えない。
すぐに反撃してくるだろう。
その時世界を守るのはカインさんたち世界に散らばってる放浪者だ。
「……そうだね。君たちが作った希望、僕が守らせてもらうよ」
にっこりと笑ってカインさんは言った