まずは基本から
訓練所と呼ばれる部屋に案内されて思ったことは一つ、広い。ただただ広い。
よく東京ドーム何個分って数え方があるけど、ここだと東京都何個分って数えた方がいいくらい広い。ちなみに東京都13個分らしい。
しかも森とか砂漠とか海まである。それに空もある。
「ここで一年間訓練をしてもらう。最初は魔法だけだが身体強化を習得したら肉体も鍛えろ。私達は鍛えれさえすれば、身体強化を使わなくても超人的な活動ができる。身体強化はそれほど難しい魔法ではない。すぐに使えるようになるだろう。詳しいことはこのメモを読め」
「はい」
そう言って渡されたメモは、めっちゃ多かった。何あれ論文?
「じゃ、頑張れよ」
バタンとそれだけ言って父さんは扉を閉めた。
身体も鍛えるのか。だから一年間か。他の三人は慣れてるようでだ。何回くらいこの部屋を釣ったことがあるんだろう。
輪名がよく日にちを間違えるのはこの部屋に来て時間感覚がずれたからか?
「さて縁、この部屋の説明をするね。この部屋にはいろんな環境のエリアがあるの。森林エリア、砂漠エリア、海エリア、重力百倍エリア、etc。基本的に他の世界では戦わないといけない時が多いからここでは戦いの訓練を主にするの。でもまずは基本の魔法からね。まずは魔力とマナの違い。魔力は私達に備わってるマナを扱う力。そしてマナは自然の中にあるエネルギー。魔力が大きければ大きいほど一度に使える魔法の威力は強くなる。でもいくら魔力が大きくてもマナがなかったら魔法が打てない。魔法を使うには魔力とマナ、両方が必要なの。と言っても結局魔法はイメージが全てよ。縁、火属性の魔法をなにか使ってみて。あ、威力はありったけでお願いね。」
火属性の魔法か、ゲームで言うところのファイヤーボールが初級だったよな。よしっ、とりあえず火の玉をイメージしてそれを大きく、もっと大きく、まだまだぁ!もっと熱くなれよぉ!
あ、ちょっと大きくなりすぎたかな?もういいや。
「・・・・あっ、ちょま、ちょっと待って」
「ほいっと」
僕は火の玉を投げたって、え?何あれ太陽?
イメージするのに目をつぶって集中してたから気づかなかった。
そのまま太陽球は海エリアの方へ飛んでいき、大きな音を立てて海エリアのほとんどの水を蒸発させてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん」
とりあえず謝った。
その後、水、風、土、光、闇の魔法をそれぞれ使った。
結果から言うと、水を使うと海までエリアの水位がもとに戻り、風を吹かせば森林エリアの気がふっ飛び女性陣のスカートがめくれビンタをもらい、土を出したら山ができて、光魔法は嫌な予感がしたからサングラスをかけて使ったがそれでも目がしばらく見えなくなった。もしかけてなかったら失明したかもしれない。闇魔法を使うと小さなブラックホールのようなものができて、輪名が吸い込まれそうになって一騒ぎがあった(笑)。
「ありえない、何このデタラメな威力。一つの属性ならともかく、全てこれ程の威力何て・・・これが縁の本気」
「ごめんけど、あれ以上威力を出したら危なそうだったから七割で止めたんだけど」
「「「あれで七割・・・」」」
廻理花達は絶句してしまってる。いや、引いてるなあれ。まあたしかにあんな威力出しといて七割とか打った僕も引いてる。
でも僕の七割でこの惨状なら魔力無限の狩矢兄さんは一体どんな威力の魔法が出せるんだ?考えるだけで恐ろしい。
いや、それよりもちゃんと準備すれば狩矢兄さんに勝てる父さんの方が恐ろしい。
「やっぱり遺伝?」
「でも、アタシはあんな威力出ないよ?」
「そこは才能なのかな?司令のデタラメな魔力量を強く遺伝したのかも。司令の魔法はこれより凄かったし」
あ、よかった、まだ上がいた。
てか父さんって司令って呼ばれてるの?
しかし遺伝か。輪名は僕程じゃないけど魔力は強いらしいし、昔はそんなのばっか敵だったのか。昔の人は頑張ったってまだ生きてたな。
「縁は魔力のコントロールができるまで属性魔法は禁止」
当然だな。下手に魔法を打って魔力のコントロール失敗しましたー、テヘペロリーンじゃあ済まないだろう。この部屋の広い理由がまた一つ分かった。
「えーっと、次はその他の魔法を使おうか。属性魔力以外の魔法はね・・・・なんて言うのかな。一言でいうとやろうと思ったら何でもできるの。だから一部では万能魔法とか呼ばれてるの。とりあえず、えっと何だったけ?・・・そうだ、記憶魔法だ。記憶魔法から使っていこうか。マナは灰色のやつだからそれを頭の中に入れて探し者をするイメージをして」
鈴音さんが驚きすぎて何を言うのか一瞬忘れたな。
灰色のマナって何に使うのか分からなかったけど、このためだったのか。灰色のマナってやけに多いと思ったけど属性魔法以外の魔法全てで使うからか。勉強になるな。
マナを頭に入れる。そして探す。・・・・・・・・見えた!これは異世界?数時間前の記憶か、もっと戻ろう。一年前、二年前・・・・・・・・・・・・・・あれ?十年前からの記憶に少し靄がかかってる。もしかしてこれが封印された記憶か?
・・・・はっ!気がつくと僕は鈴音さんに抱きかかえられてた。恥ずい。
「大丈夫縁君?記憶魔法は慣れてないと体のコントロールがきかなくて倒れちゃうから、座るか寝た状態で使わないと行けないのを、言うのを忘れてたよ。ごめんなさい」
そう潤んだ目で言われた。
なんだろう、少しキュンときた。鈴音さんはかわいいな。
しかし女の子に抱きかかえられるのは情けない恥ずかしい。あ!コラそこの二人、ニヤニヤするな!
「ごめん、ありがとう鈴音さん。やっぱり十年前からの記憶があやふやだった。多分あれが封印・・・だと思う」
「・・・そっか、それじゃあ早く静香お姉さんを探さないとね」
鈴音さんは少し悲しそうな顔をしたあと笑ってそう言った。