魔王城へ
「ん?」
何を言ってるのかわからないと言った様子で、バルスは首をかしげた。
「いや、だから僕だって」
「すまん、その意味が分からんのだが」
「僕が魔王討伐に手を貸すってことだよ!」
側にいないとおっさんの魂の回収ができないから一石二鳥だね。
ん?今回は戦わないんじゃなかったかって?今は状況が違うよ。
バルスたちの修行中に一つ仮説を思いついたんだ。
世界が崩壊する理由は希望の消滅じゃないのかもしれないって仮説。
世界が崩壊する理由は事象が起きたか起きてないか、その一点に尽きると僕は考えた。
この世界で必要な事象は『魔王城で魔王が勇者に倒される』ことだと思う。
それさえ守れば多少強引な手を使っても大丈夫。暮人兄さんがおっさんに接触した時点で違和感があったんだ。
あの時まで世界は99.9:0.1で勇者が負ける可能性が高い世界、世界の崩壊度もそのくらいだった。
希望であるバルスは放浪者の監視もしっかりついてるけど魔王はそうじゃない。そこんとこの薄い警備の目をかいくぐった犯行だったと言える。
この仮説を裏付けるために今、鈴音さんに世界を外側から見てもらっているところだ。
この仮設があっていたら世界の崩壊が止まってるはずだ。
(鈴音さん、世界の様子はどうかな?)
(縁君が言った通りね。95%世界が安定してきているわ。残りの5%は何かしら?)
(他の事象がある、又はバルス以外の誰かがおっさんにとどめを刺すって所かな。ラルファ辺りが怪しい)
少なくとも事象説は確定だ。世界の謎を解いてしまうなんて僕ってば天才すぎ。
本当は違ってたらどうしようってヒヤヒヤしてたけど。
(ともかく魔王の城に行けば分かるよ。崩壊が進めば他の事象が必要。崩壊が進まなければラルファが犯人って感じかな。申し訳ないけどもう少しそこで待機して世界を見ておいてるれるかい?)
(了解。そっちも頑張ってね)
(うん。ありがとう)
ハァ、癒やされる。少しの心遣いに僕は飢えているから。
輪名や廻理花じゃこうはいかない。むしろ僕の精神を削ってくるね。
頑張ってね。ありがとう。クウゥッ!少し新婚の夫婦っぽい気がしたぞ!ヌハァ!これで今日は頑張れるぜ!
「エニシ本当に大丈夫か?」
「ごめんごめん。それじゃあ行こうか!」
「どこに⁉」
「魔王城」
勇者パーティーが行くとこって言ったら一つだろう?
「ハア⁉」
「レッツゴー!♪」