交代終了
「なんだと……」
「私たちの、全力の攻撃が」
「無傷?」
煙が晴れて何事もなかったかのように立つ中二を見て、絶望に打ちひしがれて膝をついてしまう勇者パーティー。
こっちのアホの自滅のようなものだけど、腹に穴が空いてたから無傷ってわけじゃないんだよ。
常人だったら致命傷になってたから十分だと思う。
「まだだ!」
……やっぱりバルスは立ち上がるんだね。流石、我らが勇者様だ。
中二、頼むぞ。
(K)
なぜ略す?もうこの子のキャラがつかめないよ。
「勇者よ、なぜ立ち上がる?それ程まで傷つきながら、どうして剣をつかむのだ」
「俺は、誓ったんだ!フィーナが天国で俺を自慢の兄だと誇れるような男になるって」
フィーナ、バルスの妹か。
確かバルスの生まれ育った村はモンスターに滅ぼされて、熊を狩りに行っていたバルスだけが助かったって一度目に聞いた。
その後、村に立ち尽くしていたバルスは旅の老商人に拾われて商売のイロハを叩き込まれ、老商人が亡くなっ後は身寄りのなかった彼の後を引き継いで商人となった。
「フィーナが好きだった空を、自然を、この世界を守るためを俺は戦う!今この命が尽き果てようともぉ!」
もうバルスは限界を超えてまともな意識もとうに捨て、本能だけで戦おうとしている。
その証拠に白目で鬼気迫るように中二に向かっている。
(どうする?『滅砕覇』使うか?)
何その物騒な名前の技。だめに決まってるだろ。
一応聞くけどどんな技?
(我が左手に封印されし『滅龍王』の力を解き放ち、相対する者すべてを灰燼と帰す禁断の奥義)
怖!どうやるのかが逆に気になる。
てか中二の左手にはいくつ封印されてるんだ?
やたらめったら剣を振り回すバルスをいなすのは中二にとっては、朝飯前だった。もうこうなると技もへったくれもない。
……そろそろ1時間すぎるだろう。戻れ中二。
(うむ、われは再び深淵へと帰ろう。だが忘れるな。人が深淵を覗くとき、深淵もまた)
うるさい早くもどれ。
中二に付き合うと長くなるので強制送還した。
僕が中二病をこじらせたらあんなふうになってたのだろうか……こじらせなくて良かった。